電力全面自由化が再生可能エネルギーに与える影響は何か法制度・規制(3/4 ページ)

» 2016年03月24日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

電力小売全面自由化で小売事業者にはどういう変化が生まれるか

 電力小売全面自由化により、自由とともに激しい競争環境に飛び込むことになった小売事業者にとって再生可能エネルギーはどのような位置付けになるのだろうか。

photo Looopの事業本部企画開発部 部長の小嶋祐輔氏 2008年東京大学大学院 工学系研究科産業機械工学専攻 修士課程修了。2008〜2012年、ソニーで液晶テレビの設計を担当。2012〜2014年、アクセンチュアで経営コンサルティングを担当。2014年、Looop入社。事業企画・商品開発を担当

 ポジティブだったのがLooopの小嶋氏だ。2016年3月11日から申し込みを開始した「Looopでんき」の実績をもとに「今まで展開してきた特別高圧や高圧では再生可能エネルギーは全く無反応だったが、今回参入した低圧では再生可能エネルギーの比率を明示したことについて思った以上の反応を得られている。厳密に精査できているわけではないが、応援してくれる人がいることによって差別化につなげられると感じている」と小嶋氏は手応えを語っている。

 FoE Japanの吉田氏も「消費者に選択肢が与えられる自由化の動きは基本的にはポジティブに捉えている」と述べる。しかし「価格競争が過熱しすぎて、安い石炭火力や原子力発電所の電力を求めるような風潮が生まれるのは危険だ」(吉田氏)と警鐘も鳴らしている。

 一方でややネガティブな反応を示したがの、エネチェンジの巻口氏とスマートテックの岡野氏である。

 巻口氏は引き続きバックアップ電源の課題を述べる。「小売全面自由化の近い将来の話は、ドイツを見ればほぼ分かる。その中で最大の課題となっているのが先ほども話したバックアップ電源の問題だ。普段使わない設備を誰が負担するのかということが大きな課題となっている。最終的にドイツはグリッド側が持つことになった。しかし、グリッドと電源が一緒になる姿は電力自由化の前の姿であり、本来描いた姿とは大きく離れているはずだ。こういうことが日本でも起こり得る。このバックアップ電源を誰が負担するのかという点によって、電力システム改革の姿が変わってくる」と巻口氏は強調している。

 一方で「再生可能エネルギーは小規模な小売事業者にとって扱いにくい電源だといえる」の岡野氏は述べている。ただこれは一方でだからこそ差別化につながるということもいえる。現実的には再生可能エネルギーの需要変動の問題に対する負担は大きい。ここを日本の技術力で解決できるのではないか。需要予測などさまざまな技術の進歩により、これらを解決していくことが重要になる」と岡野氏は語っている。

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