蓄電できる燃料電池、リチウムよりも大容量・安価蓄電・発電機器(2/4 ページ)

» 2016年04月04日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

レドックスフロー電池の用途は2つ

 レドックスフロー電池の優れた性質を2つ挙げるとするとこうなる。充放電を繰り返してもほとんど劣化せず寿命が長いことと、規模を大きくすればするほど低コスト化できることだ。欠点もある。小型化には向いておらず、エネルギー密度にも限りがある。携帯型機器でリチウムイオン蓄電池に勝負を挑むことはできないだろう。

 このため、太陽光や風力、水力といった再生可能エネルギーを利用した発電所と組み合わせたときに最大の力を発揮できる。発電所は扱う電力の規模が大きく、20年以上稼働し、頻繁な充放電を繰り返すからだ。

 再生可能エネルギーと組み合わせる場合の用途も2つある。1つは大規模な系統に接続されていない地域の自立電源システム(マイクログリッド)と組み合わせる場合だ。EFEはマイクログリッドでの採用が多いディーゼル火力発電とコストを比較している。ディーゼルのライフサイクルコストは、31〜34米セント/kWhであり、同市場ではレドックスフロー電池が有用だという。

 もう1つは大規模な系統で再生可能エネルギー由来の電力の「揺れ」を吸収するというもの。同市場ではNAS電池(関連記事)に実績があり、大容量リチウムイオン蓄電池の導入も始まっている*2)

 EFEは最初にマイクログリッド市場、次に系統接続市場に参入する計画を明らかにした。現在、同社はイスラエル本社(図3)でプロトタイプ設備を動かしており、2016年内に容量10kWhの概念検証パイロットプラントを完成するとした。2017年には150kWhの系統接続可能なシステムを展開する計画だ。実証実験などを終え、2019年には最初の商業システムの導入を予定している。想定市場規模は2000億米ドルに上るとした。

*2) レドックスフロー電池の実用化では住友電気工業が先んじている。まずは規模だ。北海道電力と協力して再生可能エネルギー由来の電力の変動を吸収する世界最大級の蓄電システムの実証実験を2015年12月に開始している(関連記事)。システムの規模は、出力15MW、容量60MWh。もう1つは応答時間。同社は1秒単位の放電が可能なシステムを構築しており、太陽光発電システムの細かい出力変動の平滑化が可能だとする。

図3 EFE本社 出典:Electric Fuel Energy

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