蓄電できる燃料電池、リチウムよりも大容量・安価蓄電・発電機器(1/4 ページ)

イスラエルの企業が「鉄」を利用した蓄電池を開発した。「米テスラのリチウムイオン蓄電池Powerpackよりも安い」と主張する。同社が採用する技術はレドックスフロー。どのような蓄電池なのか、コストや技術の特徴を紹介する。

» 2016年04月04日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 イスラエルElectric Fuel Energy(EFE)は2016年3月、大容量蓄電システムとして最も安価な技術を開発し、市場に投入すると発表した*1)。1キロワット時(1kWh)当たりの設備投資費用(CAPEX)が200米ドルと低いことをうたう。

 EFEの蓄電技術は、レドックスフロー電池に分類できる。レドックスフロー電池は、大規模化に適しており、安全で環境負荷が低いことが特徴。加えて、今回の発表によって他の方式を採る大規模蓄電池よりも設備投資費用が低いことが特徴に加わった(図1)。

*1) Electric Fuel Energyは、米Arotechの子会社として設立された企業。Arotechは、軍事や医療、航空、産業用パワーシステムを20年以上にわたって開発・生産する企業。Arotechは重量が85gから1.5トンという幅広い蓄電システムを開発してきた。リチウムイオン蓄電池システムや空気亜鉛電池システムを主に扱う。

図1 代表的な大規模蓄電池の設備投資費用 EFEの技術は従来のレドックスフロー電池はもちろん、リチウムイオン蓄電池よりも低コストであると主張する。出典:EFE社の資料から本誌が作成

 EFEの示した数値(図1の左下)に幅があるのは、システム規模によって設備投資費用が異なるからだ。システム能力の上限で12時間の充放電が可能な場合(出力1MW、容量12MWh)は160米ドル/kWh、6時間では194米ドル、4時間では260米ドルだ。

 図2に6時間システムの費用構成を示す。後ほど説明する反応セルとモジュールの費用が半分近くを占めることが分かる。

図2 EFEの蓄電池の設備投資費用の内訳 出典:米Arotech

テスラのPowerpackよりも低コストをうたう

 大規模蓄電池システムは運転時にもコストが掛かる。これはシステム運用期間中、一部の消耗部品を交換しなければならないからだ。大規模蓄電システムを導入する場合、設備投資費用だけではなく、ライフサイクルコスト(全コストを生涯の充放電量で割った値)を比較する必要がある。

 EFEは2020年時点のライフサイクルコストの目標を13米セント/kWhとした。同社の分析によれば米Tesla Motorsの「Tesla Powerpack」は2020年時点で15〜16米セント。EFEの技術はコスト競争力があると主張する。

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