次世代の火力発電の技術開発はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が中核になって推進していく。当面の開発テーマは6つあって、すべてのプロジェクトを2021年度までに完了させる予定だ(図4)。それぞれのテーマに対して発電効率などの数値目標を設定して取り組む。
1つ目のテーマは石炭火力の「IGCC(石炭ガス化複合発電)」と「IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)」の開発である。中国電力とJ-Power(電源開発)が広島県の火力発電所の構内で実施する「大崎クールジェンプロジェクト」が対象だ。このプロジェクトでは3段階に分けて実証試験を進めて、2020年度にCO2分離・回収型のIGFCの実証試験を開始する(図5)。
現在は第1段階の「酸素吹IGCC」の実証プラントを建設中で、2016年度中に実証試験に入る計画だ(図6)。当初の発電効率は40.5%を見込んでいて、現時点の石炭火力で最新鋭の「USC(超々臨界圧)」と同程度になる。その後に第2段階でCO2分離・回収設備を加える。第3段階では燃料電池を組み合わせたIGFCへ進化させて発電効率を47%まで引き上げていく。
一方のLNG火力では「高効率GT(ガスタービン)」の開発が最も重要なプロジェクトである。三菱重工業が中心になって、燃焼温度が1700℃級のガスタービン発電機の開発を進めている。2020年度から実機を使って実証試験を開始する予定だ(図7)。
火力発電は燃焼温度が高いほど発電効率が高くなる。1700℃級のガスタービン発電機を使って複合発電(コンバインドサイクル)を実現できると、発電効率は57%に上昇する見込みだ。現時点のLNG火力で最先端のガスタービン発電機は燃焼温度が1500℃級で、複合発電による発電効率は52%程度である。1700℃級になれば5ポイントほど発電効率が高くなり、最新の発電設備と比べてもCO2排出量を1割くらい削減できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.