バイオマス発電が「モリノミクス」を加速、港の洋上風力と波力にも期待エネルギー列島2016年版(6)山形(1/3 ページ)

森林資源が豊富な山形県は木質バイオマスで地域を活性化する「モリノミクス」を推進中だ。木質バイオマス発電所の建設計画が相次いで始まっている。下水を処理する浄化センターではバイオガスで作った電力が増えてきた。日本海に面した港には洋上風力と波力発電の可能性が広がる。

» 2016年05月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 安倍政権が「アベノミクス」を掲げた翌年の2013年11月に、山形県では「やまがた森林(モリ)ノミクス」の構想がスタートした。森林を健全に保つために木材の収穫から植栽・育成までの流れを循環させながら、収穫した木材をバイオマスエネルギーとして幅広く利用する(図1)。バイオマスで新たな雇用を創出して地域経済を活性化する狙いだ。

図1「やまがた森林(モリ)ノミクス」の推進イメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:山形県庁

 開始から2年半が経過して、県内の各地域でバイオマス発電所の建設プロジェクトが続々と始まっている。その中で最も規模が大きいのは、日本海に面した酒田臨海工業団地に建設する「酒田バイオマス発電所」である(図2)。総事業費250億円をかけた大型のプロジェクトで、2016年6月に着工、2018年5月に運転を開始する計画だ。

図2 「酒田バイオマス発電所」の建設予定地(画像をクリックすると地図も表示)。出典:住友商事、サミットエナジー

 発電能力は50MW(メガワット)に達して、東北では最大の木質バイオマス発電所になる。年間に330日稼働させると、発電量は4億kWh(キロワット時)にのぼる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して10万世帯分を超える電力になり、酒田市の総世帯数(4万2000世帯)の2倍以上に匹敵する。山形県全体(39万世帯)でも4分の1以上の家庭の電力をカバーできる。

 燃料には県内や周辺地域の間伐材のほかに、酒田港に隣接する立地を生かして国内と海外から木質チップや木質ペレットを調達する方針だ。発電事業者は住友商事グループのサミットエナジーで、発電した電力を環境負荷の低い「FIT電気」(固定価格買取制度=Feed In Tariff=による電力)として企業や家庭向けに販売していく。

 内陸部の米沢市にある工業団地でも、新しい木質バイオマス発電所の建設が始まろうとしている。大和証券グループが出資する「DSグリーン発電米沢南発電所」である。2016年7月に建設工事に着手して、運転開始は2018年1月を予定している(図3)。

図3 「DSグリーン発電米沢南発電所」の完成イメージ。出典:グリーン・サーマル

 発電能力は最近の木質バイオマスでは標準的な6.25MWである。年間に333日の稼働を想定していて、発電量は4270万kWhを見込んでいる。一般家庭で1万2000世帯分に相当する。米沢市の総世帯数(3万3000世帯)の3分の1が利用する電力を生み出す。燃料は地域の間伐材のほかに、海外から輸入するパームヤシ殻を併用する予定だ。

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