風力発電の導入を法改正で加速、洋上風力も開発しやすく再生可能エネルギーの拡大策(2)(2/3 ページ)

» 2016年06月21日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

洋上風力発電を後押しする港湾法の改正

 国土が狭い島国の日本では、周辺に広がる洋上の空間を生かした風力発電のポテンシャルが大きい。しかし現実には欧米の先進国と比べて導入事例が少なく、国の実証研究や一部の発電事業者による運転実績があるに過ぎない。政府は全国各地の港湾や近海で洋上風力発電を導入しやすくするため、関連法案の改正を進める一方で事業者向けのガイドを2016年の夏までに作成する。

 洋上風力発電に関連する法律や条例は2種類ある。1つは国土交通省が管轄する「港湾法」で、2016年5月に改正案を公布した。港湾の管理者が公募を通じて洋上風力発電の実施計画を認定できるようになり、発電事業者は港湾区域内の占用許可を申請しやすくなった(図4)。

図4 洋上風力発電に必要な手続き。出典:資源エネルギー庁(NEDOの資料をもとに作成)

 認定を受けた発電事業者は20年間にわたって港湾区域内の水域を洋上風力発電に利用できる。現時点で全国8カ所の港湾で洋上風力発電の開発計画が進んでいるところだが(図5)、新たな認定制度によって洋上風力発電の取り組みが数多くの港湾に広がっていくことは確実だ。

図5 洋上風力発電を計画中の港湾(2016年6月1日時点)。出典:国土交通省

 陸地に近い港湾から離れた一般海域でも、洋上風力発電プロジェクトを拡大する取り組みは進んでいる。一般海域における洋上風力発電は都道府県の条例に基づく手続きが必要になる。再生可能エネルギーの導入に積極的な自治体の多くは沖合の洋上風力発電プロジェクトを支援する方向だ(図6)。

図6 全国の洋上風力発電導入プロジェクト(上、2016年1月)、福島沖の浮体式による洋上風力発電設備(下)。出典:資源エネルギー庁、福島洋上風力コンソーシアム

 国の実証事業も着実に成果を出し始めた。風力発電設備を海底に固定する「着床式」と洋上に浮かせる「浮体式」の両方とも、発電能力が1MW(メガワット)を超える実証設備を運転中だ。浮体式では福島沖の実証プロジェクトが世界最大の規模で始まっていて、2016年内には3基の大型風車から最大14MWの電力を陸上へ送電できるようになる。

 こうした先行事例についても経済産業省が近く策定するガイドに盛り込む。合わせて全国の洋上の風況マップも整備する。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が洋上風況マップのデモ版をウェブサイトに掲載中で、2017年3月末までに完成版を公開する予定だ。精度の高い風況マップがあれば、発電事業者は洋上風力発電に適した海域を選定しやすくなる。

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