「環境悪化は逆に追い風」と強気の京セラ、信頼性武器に自立市場を狙う変転する太陽光発電市場(1)(1/2 ページ)

太陽光発電市場は2015年度でモジュール出荷量が前年割れをし、市場環境は転機を迎えようとしている。こうした中、主要メーカー各社は何を考え、何に取り組んでいくのか。第1回では京セラの考えと取り組みを紹介する。

» 2016年07月05日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 太陽光発電市場は2012年の固定価格買取制度(FIT)の開始以降、モジュール出荷量が急増し2014年度まで大きく成長を遂げてきた。2014年度の出荷量は9216MW(メガワット)を記録したがここをピークに2015年度は7136MWに減少。今後も普及そのものは着実な伸びを見せるが、従来のような大幅な右肩上がりの市場成長には陰りが見え始めている(関連記事)。

 こうした中でメーカー各社もモジュールを単純に販売するだけでは今後の生き残りが難しい状況になってきている。この環境下で主要メーカー各社は何を考え、何を強みとして取り組んでいくのか。2016年6月29日〜7月1日まで横浜市のパシフィコ横浜で開催された太陽光発電の総合展示会「PVJapan2016」で主要各社にインタビューを行い、本連載では各社の取り組む方向性を明らかにする。第1回は京セラの考えと取り組みを紹介する。

連載:「変転する太陽光発電市場

「太陽光発電市場は決して陰りが見えたとは思っていない」

 国内の太陽光発電市場について、京セラ ソーラーエネルギー事業本部 マーケティング事業部 市場開発部責任者の戸成秀道氏は「京セラでは30年以上、太陽光発電に取り組んできており、こうした過去からの流れを中長期的な視野で見ると現在の状況でも順調にリニアな成長を遂げてきたといえる。ここ数年が逆に異常事態だっただけだ。そのひずみが今現れている状況だと認識している」と述べる。

 「確かに、FIT買取価格の低価格化などが続いているが、政府が掲げるエネルギーミックス上の再生可能エネルギーの目標から見てもまだまだ太陽光発電の成長余地は大きい。さらに現在法改正などによって、FIT認定済みの未稼働設備を、稼働させる動きが強まっている。こうした需要なども獲得できるはずだ」と戸成氏は語る。こうした動きから「現状の動きは、京セラにとっては逆に追い風になると捉えている」と強調する。

photo 京セラ ソーラーエネルギー事業本部 マーケティング事業部 市場開発部責任者の戸成秀道氏

 FITの買取価格は低下が続き最終的には現行の固定価格での買い取りはなくなる見込みとなっている。また、住宅向けでは2019年にはFITの前身となる「太陽光発電の余剰電力買取制度」の固定買取期間が終了した世帯が出てくる。「こうした状況から、自給自足型の電源へのニーズが高まってくる。従来のセルやモジュール当たりの効率だけでなく、製品ライフサイクル全体での発電量や、設置スペース当たりの発電量などが観点として重要になってくる」と戸成氏は述べる。

 京セラでは以前より太陽電池において長寿命性や耐久性などを売りとしてきた。実際に1984年に千葉県・佐倉市に設置した43kW(キロワット)を現在も稼働させ続け、発電データを取り続けている。そのデータによると、30年以上たった現在でも87%以上の出力を保ち続けているという。

 「京セラでは以前から耐久性や信頼性などを強みとしてソーラー製品の提案を進めてきた。さらに30年以上利用した実データなどもあり、より実践的な効果を生み出すことが証明できている。こうした強みを生かしやすい環境になっている」と戸成氏は述べる。

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