単純なモノ売りはもう終わり、それでもソーラーが成長する3つの理由変転する太陽光発電市場(7)(2/3 ページ)

» 2016年07月13日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

ZEHで湧き上がる住宅向け市場、自家消費も追い風に

 2つ目のポイントは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)による住宅向け市場の活性化である(関連記事)。従来は住宅向けの太陽光発電設備もFITを前提にした販売方法となっていたが、政府が2014年4月に閣議決定したエネルギー基本計画において「2020年に標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHを目指す」という方針が示されたことから、期待感が高まってきた。

 「ZEHを実現するために創エネ・省エネ・畜エネ性能に優れた製品を家庭で組み合わせていくことが必要だ。創エネ面では、家庭での使用量を賄う発電量を実現しないといけないため、発電量の最大化が求められる。モジュールの高効率化とともに屋根に多くの量を載せる必要がある」とシャープ エネルギーソリューションカンパニー ソーラーシステム事業部 事業部長の桃井恒浩氏は述べている。

 そのためそれぞれのモジュールの変換効率の向上とともに、屋根当たりの発電量の最大化が求められる。屋根により多く載せられるように、台形や三角形のモジュールを用意する(図2)他、軽量化などを推進する。カネカの経営企画部 経営企画グループ 幹部職 池上淳氏は「ZEHを実現するには、太陽光発電などで発電量を高める一方で、使用する電力を下げる省エネへの取り組みが必須となっている。そのためには建材としての断熱などが大きな影響を与える。カネカはこれらに両方取り組んでいるために、ZEHのトータルソリューションやコンサルティングが可能だ」などZEHを追い風と捉えている。

photo 図2 パナソニックの太陽電池モジュール。さまざまな形状を用意することで屋根当たりの発電量の最大化を目指す

 さらにZEHを実現するために太陽光発電設備とともに蓄電池やHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)など、エネルギーソリューションとしての提案が可能となる。パナソニック エコソリューションズ社ソーラーシステムビジネスユニット吉田和弘ビジネスユニット長は「蓄電池システム、HEMSとのセット販売などにトータルな住宅のエネルギーマネジメントの実現を提案していく」と述べる。また、三菱電機も「電気製品メーカーとして、エコキュート、エアコンなども含めて連動して提案していく」(三菱電機 電設住設太陽光発電システム事業部電材住設太陽光発電システム計画部長の杉本年秀氏)と語っている。

 これらに加え、2019年にはFITの前身となる「太陽光発電の余剰電力買取制度」の固定買取期間が終了した世帯が出てくる。京セラ 戸成氏は「自給自足型の電源へのニーズが高まってくる。従来のセルやモジュール当たりの効率だけでなく、製品ライフサイクル全体での発電量や、設置スペース当たりの発電量などが観点として重要になってくる」と述べている。

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