単純なモノ売りはもう終わり、それでもソーラーが成長する3つの理由変転する太陽光発電市場(7)(1/3 ページ)

太陽光発電市場は2015年度でモジュール出荷量が前年割れをし、市場環境は転機を迎えようとしている。こうした中、主要メーカー各社は何を考え、何に取り組んでいくのか。最終回の今回は今までの取材から太陽光発電市場において取り組むべき方向性について示す。

» 2016年07月13日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

第6回:「『賢く運用』に大きく舵を切るサンテック

 太陽光発電市場は2012年の固定価格買取制度(FIT)の開始以降、出荷が急増してきたが、2015年度は2014年度を割り込み、市場環境は明らかに変質した。太陽光発電設備の普及そのものは着実な伸びを見せるが、従来のような大幅な右肩上がりの市場成長は望めない(関連記事)。こうした中でメーカー各社もFITを頼みにモジュールを単純販売するだけでは難しい状況である。

 連載「変転する太陽光発電市場」では、ここまで6社のソーラーメーカーの担当者の話をお伝えしてきた。取材を進める中で、勝ち残りのポイントはほぼいくつかに収れんされてきたように思う。最終回となる今回は、この厳しい環境下で各社が勝ち残りを目指す戦略を傾向として、3つにまとめる。

改正FIT法で解放される未稼働分の認定枠

 ソーラーメーカー各社が勝機の1つとして捉えているのが「改正FIT法」である(関連記事)。2016年5月に成立した改正FIT法だが、同法改正の大きな狙いの1つが再生可能エネルギーによる発電市場の健全化である。FIT開始以降は太陽光発電設備の普及は急増したが、一方で有利な買い取り価格を投機目的で入手して保持し実際に発電を行っていない「未稼働案件」が膨大な数存在している。

 2012年7月〜2016年2月までの間でFITで認定を受けた発電容量は7万9302MW(メガワット)に達しているのに対し、実際に発電している累積導入量は2万6454MWにとどまっている。つまり、5万2848MW分が「認定を受けているのに発電していない」状態だといえる(図1)。

photo 図1 FIT施行後の認定量と導入量の比較 出典:太陽光発電協会

 これらに対し、新制度では、既にFIT認定を受けた事業者も2017年3月31日までに電力会社との接続契約が締結できていない場合には、原則的に認定が失効することになる。

 太陽光発電モジュールの出荷が頭打ちになっているのは、このFITの認定容量に対し主要電力会社から接続制限の動きが出ていることも理由としてある。ただFIT認定を取得している未稼働案件の中には既に事業採算性が取れないことが見えているものも数多く存在し、失効すれば新たに事業可能性がある案件にFITの容量が割り振られることになる。つまり5万2848MW分の容量の市場が確実に存在しているということがいえるのだ。

 京セラ ソーラーエネルギー事業本部 マーケティング事業部 市場開発部責任者の戸成秀道氏は「政府が掲げるエネルギーミックス上の再生可能エネルギーの目標から見てもまだまだ太陽光発電の成長余地は大きい。法改正などによって、FIT認定済みの未稼働設備を、稼働させる動きが強まっている。こうした需要なども獲得できるはずだ」と改正FIT法による健全市場の醸成への期待を述べている。

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