いきなり導入事例を披露、ブラザーが新規事業で燃料電池市場を開拓へ蓄電・発電機器(2/4 ページ)

» 2016年07月14日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

長時間の連続運転と「安心」にこだわる

 ブラザーの燃料電池システムが発電する仕組みは以下の通り。発電ユニットに内蔵されている熱交換器からチューブを通して水素燃料ケースに熱を送る。するとケース内の水素吸蔵合金から水素が放出される。これを発電ユニット側に送り、燃料電池スタックで発電する仕組みだ(図3)。発電に伴って排出されるのは水と排熱のみ。水は発電ユニット側のタンクにたまっていく。

図3 ブラザーの燃料電池システムの仕組み 出典:ブラザー

 ブラザーが燃料電池システムの開発において1つの目標としたのが、「72時間以上」の連続運転性能だという。長時間の運転でも電圧が下がりにくい燃料電池スタックを開発することで、燃料ケースを交換していけば72時間以上の連続運転を可能にしている。

 「72時間以上」にこだわった理由は、東日本大震災など、実際に起きた災害に起因する停電の分析から、こうした非常用電源システムには最低でも3日間は電力供給を行える性能が必要だと考えたからだという。なお、累積運転寿命は2万時間だ。

すでに複数の導入事例あり

 本格的な展開は2017年前半の予定だが、すでにBFC2-W700MHはサンプル販売を開始している。現時点で複数の導入事例があり、ブースではその一部を紹介した。1つがデータセンターの非常用電源としての活用だ。インターネット関連事業を手掛けるIIJが島根県松江市で運営する「松江データセンターパーク」(以下、松江DCP)に実証導入されている(図4)。

図4 IIJの松江DCPの実証における導入イメージ(クリックで拡大)出典:IIJ

 IIJは2016年から松江DCPで、小型のコンテナ型データセンターの運用に、電力会社から購入する電力だけでなく、太陽光発電による電力を活用する実証試験を進めている。最終的に目指すのは再生可能エネルギーによる発電設備と蓄電池を活用した「電源自立型データセンター」の実現だ。このコンテナ型データセンターの非常用電源としてブラザーの燃料電池システムを導入した。この他にも小型の携帯基地局などにも実証導入されているという。

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