全国から再生可能エネルギーを集める、バイオマスの電力に続いて水素もエネルギー列島2016年版(13)東京(3/4 ページ)

» 2016年07月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

2030年に家庭用の燃料電池100万台へ

 東京都は国が掲げる水素社会を先導する狙いから、いち早く普及に向けたロードマップを策定した。2020年までに水素ステーションを都内35カ所に拡大するほか、水素で走る燃料電池車を6000台、燃料電池バスも100台以上に増やす(図6)。東京オリンピック・パラリンピックの開催時には、燃料電池車や燃料電池バスが都内を走りまわる。

図6 水素の普及拡大に向けたロードマップ(画像をクリックすると2030年まで表示)。出典:東京都

 燃料電池バスは東京都の交通局が2015年に実証運行に取り組み、2016年度から導入台数を増やす(図7)。都営バスだけで2021年度までに80台の導入を予定している。燃料電池バスは災害時に移動式の電源として利用できるメリットもある。1台で450kWhの電力を供給することが可能で、避難所の照明と給湯に使えば900人分をまかなえる。

図7 実証実験に使った燃料電池バス。出典:トヨタ自動車

 このほかに家庭用の燃料電池「エネファーム」の普及にも力を入れて、2030年までに100万台の設置を目指す。都内に約700万世帯ある住宅の1割以上に相当する。水素で電力と熱を供給できる燃料電池が住宅に普及すれば、エネルギーの自給率が大幅に向上して目標の30%が現実的になってくる。

 燃料電池に必要な水素は福島県に頼るだけではなくて、都内でも製造できるように実証研究に取り組む。東京都の水道局が「朝霞浄水場」で2016年度内に着手する予定だ。浄水場の処理工程で発生する副生水素を活用するほか、小水力発電や太陽光発電を導入して水素の製造量を増やす(図8)。

図8 「朝霞浄水場」の水素製造実証研究(上)、太陽光発電設備(下)。出典:東京都水道局

 東京都の水道局は2015年度から「環境5カ年計画」を推進中で、大量のエネルギーを消費する水道設備の効率化と同時に再生可能エネルギーの拡大に取り組んでいる。太陽光発電は朝霞浄水場を含めて2015年度に4カ所で運転を開始した。2019年度までに5カ所を加える計画で、さらに2024年度までに17カ所に導入することを検討中だ。

 小水力発電では水道設備のさまざまな場所に分散しているエネルギーの有効活用を進める。その1つが給水所などの配水池に水を引き入れる時の余剰圧力を利用した小水力発電である(図9)。最初の導入プロジェクトを2018年度に完了した後に、2024年度までに合計8カ所に展開することを計画している。

図9 水道設備に導入できる小水力発電(給水所などの配水池を利用)。出典:東京都水道局

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