全国から再生可能エネルギーを集める、バイオマスの電力に続いて水素もエネルギー列島2016年版(13)東京(1/4 ページ)

東京都は2030年に再生可能エネルギーの比率を30%まで高める計画を推進中だ。他県で作った再生可能エネルギーによる電力の調達量を増やすため、宮城など3県でバイオマス発電の連携プロジェクトを開始した。さらに福島県と共同でCO2フリーの水素を製造するプロジェクトにも乗り出す。

» 2016年07月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 国内最大の消費地である東京都にとって、エネルギーの問題は極めて重要だ。都知事が誰になろうとも、地球温暖化対策と災害対策の両面から、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの拡大に取り組む状況に変わりはない。

 東京都が2016年3月に策定した「環境基本計画2016」では、2012年度に6%だった再生可能エネルギーの利用率を2024年度に24%へ、さらに2030年度には30%へ引き上げる意欲的な目標を掲げている。「世界一の環境先進都市」を目指して、省エネ・再エネとともに水素エネルギーの普及にも全力を注ぐ方針を宣言した。

 とはいえ都内には再生可能エネルギーや水素エネルギーの資源は限られている。解決策の1つとして、全国各地から再生可能エネルギーの電力や水素を調達する取り組みを開始した。第1弾は東京都の環境公社が実施する「再生可能エネルギー由来の電気供給モデル事業」で、宮城県の気仙沼市で運転中の木質バイオマス発電所から電力の供給を受ける(図1)。

図1 「再生可能エネルギー由来の電気供給モデル事業のスキーム(上)、「リアスの森BPP(バイオマスパワープラント)」の全景(下)。出典:東京都環境局

 気仙沼市で2014年に稼働した「リアスの森BPP(バイオマスパワープラント)」の電力を調達する。2016年7月1日から東京都環境公社の2つの施設を対象に電力の供給が始まっている。気仙沼地域の間伐材などを使って発電した電力を500キロメートル離れた東京の都心部で消費する新しいモデル事業だ。

 このモデル事業では都内の太陽光発電所の電力も併用する。天候によって出力が変動する太陽光発電と遠隔地から調達するバイオマス発電を組み合わせて、需要と供給のバランスを調整するノウハウも蓄積していく。需給調整に関しては福岡県みやま市が出資する地域電力会社の「みやまスマートエネルギー」と提携した。技術面の支援を受けながら、再生可能エネルギーの電力調達についても協力関係を構築していく。

 地方と連携した取り組みは電力の調達だけにとどまらない。東京都みずからが他県に発電所を建設するプロジェクトも進んでいる。2014年に民間のファンド運営会社と共同で創設した「官民連携再生可能エネルギーファンド」を通じて、新潟県の三条市に木質バイオマス発電所を建設中だ(図2)。総事業費55億円のうち、東京都が5億円を出資した。

図2 新潟県三条市に建設する木質バイオマス発電所の完成イメージ。出典:スパークス・グループ

 三条市の周辺の山林で発生する間伐材などを燃料に使う。発電能力は6.25MW(メガワット)で、2017年12月に運転を開始する予定だ。年間の発電量は5000万kWh(キロワット時)程度になる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると約1万4000世帯分に相当する。

 エネルギーファンドの目的は東京都が消費する電力の生産地を支援することにある。地域の産業振興に貢献しながら再生可能エネルギーの導入量を増やしていく。東京都はファンドを通じて青森県にも大規模な風力発電所を建設する。発電能力は18MWで2018年5月に稼働する見通しだ。

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