世界29カ国が加盟する国際エネルギー機関が日本のエネルギー政策を分析してレポートにまとめた。火力発電による燃料費とCO2排出量の増加に懸念を示す一方、再生可能エネルギーの普及を阻む規制を緩和するよう提言している。原子力発電の必要性に言及しながら情報公開の徹底も求めた。
IEA(国際エネルギー機関)は加盟国のエネルギー政策を定期的に分析・評価してレポートを発行している。日本のエネルギー政策に関して2008年以来8年ぶりに評価した結果を9月21日に公表した。その中で東日本大震災後の火力発電の増加を第1の問題点として取り上げている。
先進国を中心にIEAに加盟する29カ国の2015年時点の電源構成を比較すると、日本は火力発電の比率が82%に達して5番目に高い(図1)。日本を上回るのは石炭の産出国であるオーストラリアをはじめ、ポーランド、エストニア、オランダである。
対照的に火力発電の比率が低いスイス、ノルウエイ、スウェーデン、フランスの4カ国では10%以下に抑えられている。フランスは原子力が80%を占め、その他の3カ国は水力が最大の電源だ。このほかにカナダ、ニュージーランド、オーストリアでも水力の比率が高く、火力発電は20%前後の低い水準にある。
日本では震災後の火力発電の増加に伴ってCO2排出量も拡大した。電力1kWh(キロワット時)あたりのCO2排出係数は2014年に554 gCO2(CO2換算グラム)に上昇して、500gCO2以下の米国・ドイツ・英国を大きく上回っている(図2)。ただし震災前の20年間もCO2排出係数は横ばいの状態で、長年にわたってCO2削減の取り組みが進んでいなかったことがわかる。
IEAは再生可能エネルギーの導入状況についても各国を比較している。日本の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率は水力や廃棄物発電を加えると2015年に17%まで上昇した。それでも29カ国中で20番目にとどまる(図3)。最下位は韓国で、欧米に比べてアジアの先進国の遅れが目立つ。
再生可能エネルギーの拡大に向けて、IEAは日本政府に5つの改善項目を提言した。第1にバランスの良い電源構成で拡大していく政策の導入、第2にコストを削減する意欲的な目標の設定、第3に地熱と風力に対する環境影響評価の簡素化、第4に風力と太陽光の発電量の予測に基づく運用方法の確立、第5に再生可能エネルギーの熱利用に関する戦略の策定だ。
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