火力発電の稼働率をIoT×AIで改善、東京電力と三菱日立のノウハウを組み合わせ電力供給サービス(1/2 ページ)

電力会社とプラントメーカーによる火力発電設備の運用支援サービスが始まる。東京電力フュエル&パワーと三菱日立パワーシステムズが提携して、国内外の火力発電所を対象に新サービスの事業化に乗り出した。最先端の情報技術を駆使して稼働率を高め、燃料費とCO2排出量の削減を支援する。

» 2016年10月03日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 火力発電所の運営に最先端の情報技術(IT)を導入する動きが活発になってきた。先行するのは東京電力フュエル&パワー(東京電力FP)だ。プラントメーカー大手の米ゼネラルエレクトリック(GE)と9月26日に提携したのに続いて、3日後の29日には三菱日立パワーシステムズ(MHPS)と提携することを発表した。相次ぐ提携を通じて国内と海外に火力発電所の運用支援サービスを展開していく。

 新サービスのキーワードは「IoT」(Internet of Things、モノのインターネット)である。火力発電所の中核になるタービンをはじめ、さまざまな設備にセンサーを設置してネットワークでつなぎ、運転状況に関するデータをリアルタイムに収集・分析するITの手法だ。分析結果をもとに発電設備を最適な状態で制御できるため、稼働率や発電効率が向上して燃料費やCO2(二酸化炭素)排出量の削減に役立つ(図1)。

図1 火力発電所の運用支援サービス(画像をクリックすると拡大)。O&M:Operation & Maintenance、IoT:Internet of Things。出典:東京電力フュエル&パワー、三菱日立パワーシステムズ

 東京電力FPとMHPSは提携の第1弾として、フィリピンで稼働中の火力発電所にIoTによる遠隔監視システムを導入して効果を検証する予定だ。フィリピンの首都マニラから東南に100キロメートルほどの地点にある「パグビラオ(Pagbilao)発電所」が対象になる(図2)。

図2 「パグビラオ発電所」の全景(上)、所在地(下)。出典:東京電力フュエル&パワー、三菱日立パワーシステムズ、丸紅

 この火力発電所は1996年に運転を開始した石炭火力発電所で、丸紅とJERA(東京電力FPと中部電力の合弁会社)の共同出資会社が運営している。新たにIoTとAI(人工知能)の技術を駆使した遠隔監視システムを導入して、稼働率の向上や発電効率の改善、メンテナンスの最適化に取り組む。IoTとAIを組み合わせると、過去の運転実績のデータも参考にしながら、システムが最適な判断を下して発電設備を制御できる。

 東京電力FPとMHPSの試算によると、火力発電設備の稼働率あるいは発電効率を1%向上させることができれば、発電量の増加や燃料の削減につながって、年間に数億円の収益改善を期待できる。世界各国で数多く運転中の火力発電所に適用した場合の経済効果は極めて大きい。

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