電力産業の将来を示す「東電改革」、2017年から新事業計画に着手電力供給サービス(1/2 ページ)

難問が山積する東京電力の経営改革に向けて、政府が新たな対策に乗り出す。新設の委員会を通じて「東電改革」の具体案を年内にとりまとめる予定だ。並行して東京電力は中長期の事業計画を作り直し、他の電力会社を含む広範囲の提携を進めながら「非連続の経営改革」に挑む。

» 2016年10月07日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 経済産業省は「東京電力改革・1F問題委員会」の第1回会合を10月5日に開催した。「1F」は国を揺るがす重大な事故を起こした「福島第一原子力発電所」の略称で、事故の収束と福島の復興を図るために東京電力の経営改革を加速させることが目的だ。委員会を通じて具体的な改革案を年内にとりまとめたうえで、1Fの廃炉・汚染水の対策費用に関する新たな制度を検討する(図1)。

図1 東京電力の改革に向けた新たな取り組み。出典:経済産業省

 東京電力の経営改革における最大の問題は、事故の収束に必要な賠償費用と廃炉・汚染水対策費用を東京電力だけで背負いきれないことにある。賠償費用は当初想定した5兆円から9兆円に増え、さらに増加が見込まれている。一方の廃炉・汚染水対策費用も2兆円をはるかに上回ることが確実な状況だ(図2)。

図2 これまでの国と東京電力の対応。出典:経済産業省

 この間に国の「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が東京電力に1兆円を出資して、株式の過半数を所有する国有化の状態に移行した(図3)。さらに「原子力損害賠償金」として2016年9月までに合計6兆円を超える資金を東京電力に交付している。このまま賠償費用が増え続け、同時に廃炉・汚染水対策費も拡大していくと、国の財政と東京電力の経営に多大な影響を与える。

図3 東京電力の経営状況(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 こうした事態から脱却するするために、国が新たな制度を導入する。新制度は東京電力の廃炉費用を他の事業者の電気料金にも上乗せして回収する案が有力だ。小売全面自由化が進む中で、東京電力の電気料金だけが上昇してしまう問題を回避する狙いもある。並行して東京電力は「非連続の経営改革」を断行する。

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