中部で予備率3%を切る予測も、今冬は全国10地域すべて節電要請なしエネルギー管理(1/2 ページ)

全国の夏の需給実績と冬の見通しがまとまった。今冬は中部で12月と1月に予備率が3%を切る予測が出たものの、他地域で余った電力を調達すれば問題なくカバーできる見込みだ。冬の需要が増加する北海道では予備率が15%を超えて余裕がある。今夏の実績では9地域の予備率が10%を上回った。

» 2016年10月20日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 電力広域的運営推進機関(広域機関)が10月18日に発表した今冬(12〜3月)の需給見通しによると、中部を除く9地域では予備率(最大需要に対する供給力の余裕)が3%を上回って、安定した需給バランスを確保できる(図1)。

図1 2016年度の冬の需給バランスの見通し(画像をクリックすると拡大)。出典:電力広域的運営推進機関

 直近で最も寒かった2011年度と同様の厳しい寒さになる前提で予測したもので、今年の冬も電力が不足する心配はない。このため広域機関は政府を通じて各地域に節電を要請する必要はないと判断した。2011年3月に東日本大震災が発生して以来、5年目で初めて冬の節電要請がなくなった。電力の需給面では震災の影響を克服できたと考えられる。

 地域別に見ると、冬の需要が増加する北海道では例年並みの供給力を見込む一方、最大需要が減少して予備率に十分な余裕が生まれる。需要がピークになる12〜2月の予備率は15%を超える見通しだ。日本海側の寒さが厳しい中国でも15%を上回る。そのほかに東京と中部を除く7地域で10%前後の予備率を確保できる。

 東京では2月の予備率が4.3%まで低下する予測になった。中部では12月に1.8%、1月に2.7%の予測で、広範囲の停電が発生しかねない3%を下回る危険な水準に落ち込む。広域機関によると、中部電力以外の小売電気事業者が調達する供給力を現時点で織り込んでいないことが影響している。実際の供給力は予測よりも増えて、予備率は3%を十分に上回ることが確実な状況だ。

 広域機関では想定外の発電機の停止や送電線の事故の影響も検証した。発電機1基あるいは送電線1回線で故障が発生した場合に、東京と中部の供給力は予備率3%を維持できる水準から大幅に低下してしまう(図2)。

図2 単一故障(N−1故障)が発生した場合の供給力の減少(画像をクリックすると拡大)。出典:電力広域的運営推進機関

 東京では2月に182万kWも足りなくなる可能性があり、中部でも12月と1月に100万kW以上の不足が発生しかねない。このほかに北海道・東北・北陸・四国でも予備率3%を維持できなくなるおそれがある。

 ただし運用上の需給対策を追加で実施することによって、東京や中部でも単一故障の発生時に予備率3%以上を確保できるめどが立っている(図3)。他のエリアからの調達や卸市場を通じた取引などによって、不足分を大きく上回る電力を確保することが可能だ。

図3 中部・東京の運用上の需給対策。FC:周波数変換装置。出典:電力広域的運営推進機関

 最悪の場合には複数の故障が同時に発生することも考えられるが、もともとの需給見通しが需要を多めに見込んでいることに加えて、故障が発生する日と需要が最大になる日が重なる確率は小さい。この冬も全国各地の電力供給に不安はない。

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