岩手県の太平洋沿岸にある漁港に波力発電所が完成した。漁港の防波堤の外側に発電所を設置して、海中にある波受け板が振り子状に動いて発電する。発電能力は43kWで、11月から陸上に送電を開始する予定だ。電力会社の送配電ネットワークに電力を供給できる日本で初めての波力発電所になる。
日本初の波力発電所が完成した場所は、岩手県の久慈市(くじし)にある「久慈港」の一角にある(図1)。この一帯は東日本大震災で津波の被害を受けた地域で、復興プロジェクトの1つとして波力発電の実証に取り組んでいる。
久慈港の中にある「玉の脇漁港」の防波堤を利用して、「久慈波力発電所」が10月24日に完成した(図2)。プロジェクトの中心メンバーである東京大学・生産技術研究所が開発した波力発電装置を備えている。
発電所は海底に設置する基礎部分の上に、建屋を搭載する構造になっている。建屋の中に発電機があって、その下に大きな波受け板(ラダー)がぶら下がる(図3)。全体の大きさは横幅が7メートルで、高さと奥行きは12メートルある。80トンの重さで海底の岩盤に固定する仕組みだ。
波受け板の大きさは高さが2メートルで、横幅が4メートルある。防波堤に水平に設置した波受け板は海からの波を受けて振り子状に回転し、さらに防波堤から戻ってくる波も受けて回転力を高める。回転軸が発電機とつながっていて電力を生み出す(図4)。
発電能力は43kW(キロワット)ある。波の強さは季節や天候によって変動するため、平均で10kW程度の出力を想定している。年間の発電量は約9万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算すると25世帯分に相当する。
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