送電線の火災事故の原因は「地絡」、ケーブルの接続部分で大電流が発生か電力供給サービス(1/2 ページ)

1カ月前の10月12日に埼玉県内の地下送電線で発生した火災事故の原因が明らかになってきた。現場を通る合計18本の送電ケーブルのうち、1本だけが接続部分の内部から膨張して破裂していた。ケーブルから地面に瞬間的に大きな電流が発生して火災を引き起こした可能性が大きい。

» 2016年11月14日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

既報:「送電線の火災事故を検証、ケーブルの油圧が事故前に低下」

 埼玉県にある地下送電線を収容した「新座洞道(にいざとうどう)」で10月12日に発生した火災について、送配電事業会社の東京電力パワーグリッド(東京電力PG)が事故現場の状況をもとに原因を推定した。18本の送電ケーブルのうち最初に絶縁状態が破壊した1本で他のケーブルには見られない欠損が発生していた(図1)。

図1 送電ケーブルの破損状況(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力パワーグリッド

 異常な状態が見つかったのは、「城北線3番」と呼ぶ送電線の接続部分である。送電線はケーブルを3本ずつ組み合わせて電力を送る仕組みで、3本を黒相・赤相・白相として識別する。城北線3番の黒相の接続部分だけが内部から膨張して破裂していた(図2)。ケーブルの接続部分は外側を銅管で覆っているが、内側から大きな力が働いたことが想定できる。

図2 「城北線3番」の接続部の破損状況(上)、黒相の破損状況(下)。出典:東京電力パワーグリッド

 こうした状況をもとに、破裂したケーブルの接続部分で「地絡(ちらく)」が発生したと東京電力PGは推定した。地絡は送電ケーブルから地面に向けて瞬間的に大電流が生じる現象で、一般的な漏電よりも大きな電流が発生する。そのエネルギーで火災を引き起こすおそれがある。

 城北線3番の黒相で地絡が発生した原因は特定できていないが、ケーブルの老朽化などによって内部に何らかの異常か破損が生じていたものと考えられる。送電ケーブルは中心部分に電力を通す導体があり、その周囲を絶縁体でカバーして外に電力が漏れない構造になっている。絶縁体の機能が失われてしまうと地絡につながる。

 しかも事故が起きた送電ケーブルには古いタイプの「OF(Oil-Filled)ケーブル」が使われていた。OFケーブルは導体の内側に油を流す通路があって、導体の外側に巻いた紙(絶縁紙)に油をしみこませる構造になっている(図3)。ケーブルが破損して地絡が発生すれば、油に引火して瞬時に火災を起こす可能性がある。城北線3番の黒相では、事故の直後に油圧の低下も確認されている。

図3 「OFケーブル」の構造。出典:東京電力パワーグリッド
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