バイオマス発電ができる軽トラ、災害時に電力と温水を供給BIM/CAD(1/2 ページ)

芝浦工業大学が災害時などに電気とお湯を供給できるハイブリッド電源車を開発した。スターリングエンジンと太陽光パネル、蓄電池を搭載しており、3kgの木質ペレットを1時間燃焼すると電力と45度の温水を200リットル提供できる。軽自動車サイズで、災害時の利用を想定した。

» 2016年11月30日 07時06分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 芝浦工業大学気工学科の高見弘教授は2016年11月29日、災害時などに電気とお湯を供給できるハイブリッド電源車を開発したと発表した。軽トラックを改造しスターリングエンジンと太陽光パネル、蓄電池を搭載したもので、災害時などに役立つ移動できる電源としての活用を想定したユニークな車両だ(図1)。

図1 開発した電源車(クリックで拡大)出典:芝浦工業大学

 車両は「災害などで被災しても電気とお湯があれば、必要最低限の生活レベルは確保できる」という開発コンセプトのもと、再生可能エネルギーを活用して電力とお湯を供給できる複数のシステムを組み込んでいる。まず、車両の上部には100W(キロワットの)太陽光パネルを合計6枚設置。夜間や天候不良時、急な大電力消費を想定し、太陽光で発電した電力を貯蔵できる48V(ボルト)110Ah(アンペアアワー)の蓄電池も搭載している。

 大きな特徴となっているがの、スターリングエンジンの搭載だ。これはシリンダー内のガスまたは空気を外部から加熱・冷却し、その体積変化でピストンを動かすことで熱エネルギーを運動エネルギーに変換する外熱機関。今回の車両では、ピストン駆動機構を持たず、パワーピストンを振動させて動力を取り出すフリーピストンタイプのものを採用している。木質チップなどのバイオマス資源を燃焼させて外から熱を加え、取り出した動力で出力1kWの発電機を駆動させる。さらに燃焼時の熱を活用し、同時にお湯も作るという仕組みだ(図2)。

図2 フリーピストンスターリングエンジンの概要 (クリックで拡大)出典:芝浦工業大学

 出力10kW未満のスターリングエンジン発電設備は、一般用電気工作物に区分される。しかし、ピストンスターリングエンジンに一般的な発電制御用コンバーターシステムを接続して発電を行おうとすると、コンバーターが出す高調波によってエンジンが不安定になるという課題があった。

 高見教授はかねてよりスターリングエンジンの研究に取り組んでおり、この問題を解決するコンバータを開発。このほど産学連携で軽自動車の荷台に収まるシステムを完成させた。現在、システムの一部を「フリーピストンスターリングエンジン発電装置」として特許申請を行っているという。

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