太陽光発電でイチゴを栽培、世界初の竹バイオマス発電にも挑むエネルギー列島2016年版(35)山口(2/3 ページ)

» 2016年12月20日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

ダムの水面の下でも小水力発電

 もっと規模の大きな小水力発電の導入プロジェクトも相次いで始まっている。山口県の企業局が宇部市に所有する「宇部丸山ダム」に小水力発電設備を導入した(図5)。ダムの水面から突き出た取水塔の下で稼働中だ。

図5 「宇部丸山ダム」の取水塔。左側に見えるのは太陽光発電を利用した水質改善システム。出典:山口県企業局

 取水塔の下には周辺地域に水道用水や工業用水を供給するための施設が設けられている。この施設内を流れる水を分岐させて水車発電機に送り込むように変更した(図6)。取水塔から取り込んだ水流の落差は19メートルになり、最大で毎秒0.94立方メートルの水量を発電に利用できる。

図6 「宇部丸山発電所」の内部構造。出典:山口県企業局

 ダムから下流に水を供給する前に、施設内で水圧を下げる必要がある。従来は水道管に制御弁を設けて水圧を調整していたが、代わりに水車発電機を導入した(図7)。水車を回転させる反動で水圧を下げながら、これまで未利用だった水力エネルギーを電力に変える仕組みだ。

図7 水車発電機の外観と設置場所(画像をクリックすると拡大)。出典:山口県企業局

 2016年4月に運転を開始して、発電能力は130kWある。年間の発電量は57万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して160世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に約1900万円の収入を得られる見通しだ。買取期間の20年間の累計では4億円近い収入になる。事業費は2億2800万円かかったが、運転維持費を加えても十分に採算をとれる。

 宇部丸山発電所を含めて県営の水力発電所は現在12カ所で稼働中だ(図8)。大半は1950〜60年代にかけて運転を開始した大規模な水力発電所で、12カ所の発電能力を合わせると5万kWを超える。このうち固定価格買取制度の対象になる小水力発電所は2カ所にあり、さらに1カ所で建設プロジェクトが進んでいる。

図8 山口県が運営する水力発電所。出典:山口県企業局

 東部の岩国市に建設中の「平瀬ダム」に導入する小水力発電所である。平瀬ダムは治水を目的に新設するダムで、2021年の完成を目指している。このダムの直下に小水力発電所を併設して、ダムの下流の自然環境を守るために放流する水量を生かして発電する計画だ(図9)。

図9 「平瀬ダム」に導入する小水力発電設備のイメージ。出典:山口県企業局

 水車発電機には最大で毎秒4立方メートルの水が流れ込み、水流の落差は33メートルになる。発電能力は1100kWを想定している。ダムが完成する翌年の2022年4月に運転を開始する予定だ。年間の発電量は525万kWhに達して、1460世帯分の電力を供給できる。

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