送電ケーブルの緊急点検を進める一方、火災で使えなくなった送電線の復旧工事を急ぐ必要がある。事故の影響を受けた2系統の送電線のうち「北武蔵野線」を2017年6月までに復旧させる(図6)。3本ある送電ケーブルの2本を優先的に更新する計画で、新しいタイプの「CV(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース)ケーブル」に張り替える。
CVケーブルは耐熱性に優れたポリエチレンを絶縁体に使っていて、OFケーブルのように内部に油を流す必要がなく、ケーブルが燃えて火災を引き起こす可能性は低い。北武蔵野線の残り1本と、もう1系統の「城北線」の3本も、2019年度をめどにCVケーブルに張り替える計画だ(図7)。
東京電力PGは老朽化が進んだOFケーブルを対象に、2002年度から防災対策を実施してきた。ケーブルの周囲を防災シートでカバーする方法が主な対策である。火災事故が発生した「新洞26」の中では、最も低い位置にある「城北線1番」だけ防災シートでカバーしていた(図8)。
ただし城北線1番のOFケーブルも火災事故の影響を受けて絶縁状態が破壊した。東京電力PGは現在のところ防災シートの有効性を改めて検証していない。今後も防災シートか自動消火設備の導入を進めて、2019年度までに4603カ所すべての設置を完了することにしている。2020年の夏に開催する東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせる。
新たな防災対策としてIT(情報技術)も取り入れる方針だ。OFケーブルのうち超高圧の275kV(キロボルト)の送電線を対象に、ケーブルの先端部分や接続部分に電流センサーを設置して異常を検知する(図9)。
OFケーブルの劣化によって絶縁状態を保てなくなると、部分的に放電が発生する可能性がある。その電流をセンサーで検知して異常を把握する仕組みだ。センサーで計測したデータを無線ネットワークでITシステムに送信して分析する。このところ産業界で注目を集めているIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用した設備の故障を予知するシステムである。
東京電力PGは優先度の高い送電線を対象に、IoTによる部分放電監視システムの測定試験を2017年3月末までに実施する。その結果をもとに2017年度から適用範囲を拡大していく。地中にある無人の送電設備の異常をIoTで素早く検知できると、事故の防止と点検コストの削減につながる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.