58カ国において再生可能エネルギーが増えた理由は大きく2つある。1つは太陽光発電設備のコストが急激に下がってきたこと、もう1つは投資の集中だ。
58カ国における出力1MWを超える太陽光発電(太陽光)に対する投資額は、2015年には対前年比43%増の718億ドルとなった。他の再生可能エネルギーを合計すると、OECD諸国に対する投資金額を初めて上回った(図3)。
容量増加と投資拡大を支えたのが、太陽光や風力のコストダウンだ。化石燃料を用いた発電に対して、競合できるコストまで低減できたことがきっかけとなっている(図4)。一部の国では太陽光が最も安価な電力源となっている。
これらの投資はどこから来るのか。ほぼ半数に相当する額を途上国自らがまかなっている*2)。残りの半額はOECD諸国の民間投資家や開発金融機関による。OECD諸国などの投資比率は増加傾向にある。2012年に約3分の1を占めていたが、2015年には約2分に1に達しているからだ。
*2) 中国は実質上、全ての再生可能エネルギーに関する投資を自国資本でまかなっているという特徴がある。これは他の57カ国には見られない。
再生可能エネルギーに由来する電力の比率が高まるにつれて、途上国でも系統の問題が表面化しつつある。
普及率が高い国の一部には2つの問題がある。1つは十分な送電網が建設される前にプロジェクトが次々と完成し続けていることだ。
もう1つは風力や太陽光の「クリーンな」電力を石炭火力由来の電力より、系統上優先していない国があること*3)。
途上国ならではの解決策もある。「オフグリッド」または「ミニグリッド」と呼ばれる設計運用だ。従来の電力インフラ設計では、大規模発電所をハブ、強力な系統線をスポークとした電力ネットワークを作ることが前提だった。だが、このような手法は、最貧国に散らばる電化が十分進んでいない12億人には最適ではないという主張だ*4)。
個別の住宅や村単位で発電し、必要をまかなうという取り組みはこれまでも試みられてきた。だが、途上国に立地する新興企業は私企業から資金を得ることで、オフグリッド、ミニグリッドのインフラをより拡大できた。2015年までの調達金額は累計4億5000万ドル以上に達する。
*3)ヨーロッパ諸国が大規模石炭火力から再生可能エネルギーに移行する際にも、同じ問題に直面した。日本は現在これら2つの問題に直面中だ。
*4) 電話線ネットワークが未発達な国々で、携帯電話の普及率が急速に高まった状況と似ている。
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