Climatescope 2016は、アジアの10カ国、アフリカの22カ国、ラテンアメリカとカリブ海諸国の26カ国を対象としている。それぞれの地域ごとの最新動向を紹介しよう。
アジア10カ国は調査対象となった他の48カ国全てよりも、クリーンエネルギーの容量拡大が大きかった。容量全体の89%に達する。これは中国とインドの貢献が大きい(図5)。2015年の導入量62GWは、2014年から60%増加した計算になる。
中国に次ぐインドは、7.9GWを導入した。アジア3位のパキスタンの成長もめざましい。太陽光と風力を中心とした再生可能エネルギーの導入規模は758MWで、前年の約5倍のペースで導入が進んでいる計算だ。Climatescopeが算出した58カ国のランキングにおいて、中国は1位、インドは第6位。パキスタンはトップ10を狙える位置、12位にまで順位を上げたことになる。
アジア10カ国に対するクリーンエネルギー投資額は1270億ドルに達し、これは全58カ国に向けた投資の82%に相当する。太陽光に対する投資は640億ドルであり、Climetescopeのこれまでの調査の中で初めて風力を上回った。
中国とインドには課題もある。両国では特定の再生可能エネルギープロジェクトの容量の縮小と、再生可能なプロジェクト所有者に対する支払いの延期が続いている。中国は電力部門の大幅な改革と再生可能エネルギーの系統連系の問題が拡大しつつある。
クリーンエネルギー政策は、サハラ以南のアフリカにも広く浸透している。同地域の19カ国のうち14カ国が再生可能エネルギーの導入目標を導入、2014年から2015年にかけてクリーンエネルギーへの投資が約2倍に成長し、52億ドルに達した。アフリカ19カ国は気候変動を抑制する政策をCOP21に向けて更新している。19カ国全てが対策を提出し、そのうち14件は排出削減の数値目標を含んでいた。
アフリカ10カ国の中で優等生は、南アフリカ共和国だ。記録的な投資を呼び込んだことによって、世界ランキングでも5位を占めている。同国のクリーンエネルギーオークションプログラムは2015年に41億ドルの新規投資をもたらした。
クリーンエネルギー開発や健全な投資活動、関連するエネルギー分野のステークホルダーの活動によって、ウガンダ(アフリカ2位、世界7位)とケニア(アフリカ3位、同10位)も高い順位を占めた。2016年版のClimatescopeでは新たに加わったヨルダンも快調だ*5)。同国の太陽光発電部門は、2015年に4億900万ドルの投資を呼び込み、大きく拡大した。これは太陽光発電に対する広範な支援政策のおかげだ。世界ランキングは11位である。
*5) 中東に位置するヨルダンとレバノンは一般にはアジアに含めるものの、Climatescope 2016ではアフリカの一部として集計している
アフリカ諸国は先ほど触れた「オフグリッド」「ミニグリッド」をうまく生かしている。政府の政策にも反映されているほどだ。アフリカ19カ国は電化率の改善目標を示しており、13カ国は目標を達成するため、これらのソリューションの導入計画を定めている(図6)。
ケニアとタンザニア、ジンバブエのオフグリッド電化企業は、約8000万ドルの新規投資を2015年に確保。これは2014年の金額の4倍以上に相当する。東アフリカが同ソリューションの先進地域となった形だ(図7)。
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