東京電力、都市ガス自由化でシェア1割獲得へ電力供給サービス

東京電力がついに2017年4月から自由化される家庭向けの都市ガス小売市場に参入すると発表した。既にLNGの卸供給で提携しているニチガスとの関係をさらに深め、両社合計で2019年度までに100万件の顧客獲得を目指す方針だ。

» 2016年12月27日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東京電力エナジーパートナー(以下、東電EP)は2016年12月26日、東京都内で会見を開き、2017年7月から家庭向けの都市ガス小売市場に参入すると発表した。同時にガス自由化がスタートする2017年4月以降、日本瓦斯(以下、ニチガス)が販売する都市ガスについて、東電EPが卸供給を行う基本契約も締結。両社合計で2019年度までに市場シェアの1割に相当する100万件の顧客獲得を目指す方針だ。

会見に登壇した東電EP 代表取締役社長の小早川智明氏(右)とニチガス 代表取締役社長の和田眞治氏

 両社は2016年5月に、ニチガスが2017年4月以降に販売する都市ガス全量について、東電EPが卸供給を行う基本契約を締結している。それまでニチガスは全量を東京ガスから調達していた。この契約では東電EPがLNG換算で年間24万トン、顧客数では32万件相当する都市ガスを供給することになっている。今回、これをさらに拡大し、2017年4月からの初年度に両社合計で都市ガスの販売量を50万件相当まで広げる方針だ。

 ニチガスは2017年4月から、東電EPは同年7月から販売を開始する。販売エリアは東京ガスの販売地域である首都圏が中心となる。東電EP単体での初年度の新規顧客の獲得目標数は4万件、ニチガスは11万件を計画している。東電EPはガス器具の保安業務などをニチガスに委託する考え。また、両社で共同出資会社を設立することも検討する。

両社の契約概要と都市ガスの販売目標 出典:東京電力エナジーパートナー

 さらに両社は「ガス販売に必要な機能やノウハウを融合するプラットフォーム」を構築していく方針だ。電力の小売自由化とし比較すると、ガス市場は参入障壁が高い。そこで両社で販売プラットフォームを構築し、エネルギー以外の異業種企業の参入および提携にも備える狙いだ。

 会見に登壇した東電EP 代表取締役社長の小早川智明氏は「われわれの強みはLNGの安定した調達力にある」と述べる。東京電力ホールディングスの2015年度のLNG調達量は約2300万トン。これは都市ガス販売でライバルとなる東京ガスの2倍以上の調達量である。

 また、顧客獲得に向けては「電気と違いガスについては既存顧客がいるわけではない。そこで、ガス販売単体で差別化するというのではなく、電気とガス、さらにはそれに付帯したさまざまなサービスを含めた『総合エネルギーサービス』として評価してもらうことが重要だと考えている。また、パリ協定の批准もあり、住宅の省エネにも注目が集まっている。そうした中で顧客に対する省エネという価値を提供できるような方法も検討していきたい」(同氏)と述べている。具体的な料金体系などについては今後発表するとしている。

 一方、東電EPに先行して販売を開始するニチガスは、2017年1月から予約受付を開始する計画だ。代表取締役社長の和田眞治氏は「これまでの既存の料金より3〜10%安い価格で提供していきたいと考えている」と述べている。また同社は既に東電EPと家庭向け電力販売でも提携しており、和田氏は「電気とガスという、これまでは別々のオペレーションだったものをシームレスに提供できる体制を整える。また、これまでのガス業界というのは、生産を重視し、消費者側を軽んじてきたのではないかと感じている。そこで、ガス以外の付加価値となるサービスのクオリティを向上させていくことにも注力していきたい」と語った。

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