−30℃で動く「バインド電池」、家庭用から大規模まで蓄電・発電機器(1/2 ページ)

蓄電池には幾つかの弱点がある。そのうちの1つが、低温環境では動作しないこと。CONNEXX SYSTEMSによれば、リチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池を内部で並列接続した「バインド式蓄電池システム」が、課題解決への解になり得るという。−30℃でも充電容量の70%を利用できたからだ。

» 2016年12月27日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

リチウムイオン蓄電池が動かない

 「当社が開発したバインド式蓄電池システムは−30℃の環境下でも自律的に放電でき、これまで導入が難しかった寒冷地で用途を開拓できるだろう」(CONNEXX SYSTEMS 研究企画室で室長を務める可知直芳氏)*1)

 例えば乳牛を扱う酪農や融雪マット、オフグリッド気象センサーの電源に適するだろう。「当社は家庭用の蓄電池システムを製品化している。容量は4〜13.6キロワット時(kWh)だ*2)。今回の研究成果を応用して、将来は北国の家庭用の蓄電池システムを実現できるのではないかと考えている」(可知氏)。

 蓄電池は低温環境下では特性が劣化する。例えばリチウムイオン蓄電池は低温環境下では内部抵抗が高くなるため、満充電であっても放電できない、使えない。「車載用の鉛蓄電池は−30℃であってもエンジンを始動できる。そこで、リチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池を並列接続したバインド式蓄電池システムであれば、低温環境下でもよい特性が出せるのでないかと考えた」(可知氏)。

*1) 2016年11月29日〜12月1日に幕張で開催された「第57回電池討論会」における研究発表「低温環境で優れた特性を有するバインド式蓄電池システム」より。
*2) 容量4kWhの製品「BB0040CT1」はパワーコンディショナーが不要で、太陽光発電システムと連携動作が可能。医療福祉施設向けの定置型蓄電池もある。

自律的に動作して安全性が高い

 バインド式蓄電池システムの模式図を示す(図1)。特徴は2つある。1つは内蔵する2種類の蓄電池が相互に自律的に1つの蓄電池として機能すること。

図1 バインド式蓄電池の構成 リチウムイオン蓄電池と鉛電池を並列接続した。仮想セル接続方式と呼ぶ 出典:CONNEXX SYSTEMS

 自律的とはどのような意味だろうか。例えば電池システム全体が過充電状態に置かれたとき、リチウムイオン蓄電池単独では、高い電圧のまま推移する。危険だ。バインド式蓄電池であれば、イチウムイオン蓄電池から鉛蓄電池にエネルギーが移転する。過充電に対する耐久性が増す(図2)。

図2 鉛蓄電池部分が完全弁として機能する 試験のために過酷条件下に置いた。2種類の電池を容量の120%まで過充電し、その後17時間維持、最後に100℃の環境下に置いた 出典:CONNEXX SYSTEMS

 もう1つの特徴は、システム構成にスケーラビリティがあることだ。「容量13.6kWhの構成では9つのユニットを用いる。これを900ユニットに拡張できる。容量は1メガワット時(MWh)まで高まり、40フィートコンテナに搭載可能だ。0.5〜1MWhのシステムの試験を他社が進めている段階であり、数MWh級も実現できると考えている」(可知氏)。

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