日本では太陽光発電の導入量が圧倒的に多いが、海外では風力発電が再生可能エネルギーの主流になっている。導入量の増加に伴って発電コストが低下して、2016年には全世界の平均で8.8円/kWhまで下がった(図10)。最新の事例では3円/kWhを切るケースもある。
これに対して日本の風力発電の平均コストは13.9円/kWhと高く、海外の1.6倍の水準だ。政府は太陽光発電と同様に風力発電のコスト低減を進めて、2030年までに現在の海外の平均値と同等の8〜9円/kWhを目指す。実現できれば原子力や石炭火力の発電コストよりも低くなって導入にはずみがつく。
風力発電でも設備利用率が高くなってきた。従来は標準で20%を想定していたが、直近の実績値では24.8%まで上昇している。同じ能力の設備でも年間の発電量が2割以上も増える。これを前提に風力発電の買取価格は3年後の2019年度に19円まで引き下げる予定だ(図11)。既設の発電設備をリプレースした場合には16円になる。買取価格が企業向け電気料金の水準(14円/kWh)に近づいていく。
ただし風力発電には騒音や動植物に対する影響の問題がある。人家の近くや鳥類の生息地には建設しにくい。その点で将来に向けて導入量の拡大を期待できるのは洋上風力だ。工業地帯にある港湾区域や沖合の一般海域でも洋上風力発電の導入プロジェクトが増えてきた(図12)。
現在のところ発電設備を海底に固定する「着床式」を採用する事例が多いが、日本の近海には遠浅の部分が少ないために、着床式で建設できる海域は限られている。今後は洋上の発電設備をアンカーチェーンで安定させる「浮体式」が増えていく。
浮体式の洋上風力発電で世界最大級の実証設備が、福島県の沖合20キロメートルの海域で運転中だ(図13)。3基の大型風車と1基の変電設備から海底ケーブルで陸上まで電力を供給する。発電能力は合計で1万4000kWに達して、一般家庭の1万世帯分に相当する電力を洋上で作ることができる。
この実証設備で導入効果を確認できれば、浮体式による洋上風力発電の開発プロジェクトが全国に広がっていく。導入事例の増加に伴って発電コストは下がる。2030年代には陸上風力よりも洋上風力の導入プロジェクトのほうが多くなる見通しだ。
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