電力×地域・地方――地域特化型エネルギー事業3分で分かるこれからの電力業界(5)(2/3 ページ)

» 2017年01月19日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

北海道の生協組合員に的をしぼった「トドック電力」

 本業の顧客囲い込み型の例として、ここでは北海道の「トドック電力」をご紹介します。トドック電力は、全国各地で地域に密着した各種事業を行っている「生協(生活協同組合/コープ)」が主体となって運営する新電力会社の一つです。

 コープさっぽろ(株式会社エネコープ)が運営母体となっているトドック電力は、北海道エリア全域をターゲットにした電力提供サービスを行っていますが、その大きな特徴は、再生可能エネルギーで発電されたFIT(注)電気を60%使う「FIT電気メニュー」と、FIT電気よりもさらに割安となる「ベーシック電気メニュー」という2種類のメニューを提供していることです。再生可能エネルギーの普及に協力したいと考える人は「FIT電気メニュー」を、一方、少しでも電気代を安くしたい人は「ベーシック電気メニュー」を選べるというわけです。

 また次のような、コープさっぽろグループ提供の各種サービスとのセット利用によるお得な特典も用意されています。

 ・灯油とのセット割引で電気料金がさらに安くなる

 ・コープさっぽろの店舗や宅配で使えるポイントがもらえる

 ・トドックスマホ(コープさっぽろの格安スマホ)とのセット割引で電気料金がさらに安くなる

 ・電気、灯油、LPガス、宅配システムなどの請求と決済がコープさっぽろでまとめて処理できる

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 トドック電力以外にも、大阪いずみ市民生活共同組合による電力ブランド「コープでんき」など、地元でコープを利用する人に特化した電気料金プランやサービスを提供する会社・団体が出てきています。

注 FIT:この電気を調達する費用の一部は、電気をご利用の全ての皆さまから集めた賦課金により賄われており、この電気のCO2排出量については、火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われます。

2 自治体主導の地方創生型

 これは地方の自治体が主体となって、または民間企業と自治体が連携して地域新電力会社などを作りエネルギー事業を行っていこう、というものです。こうした会社には、自治体や地域企業が出資して一つの母体を作って事業展開をしているところが多いようです。そこには、再生エネルギーの生産・販売を中心に、地域でエネルギー循環をさせる「地産地消」を目指すなど、みんなでエネルギーシェアをしていこうという発想もあります。また地域内での「雇用の創出」や「地域内でのお金の循環」といった効果も期待されます。

 このような自治体主導の電力会社は全国各地にありますが、例えば、鳥取市と鳥取ガスが設立した「とっとり市民電力」、次に紹介する福岡県みやま市の「みやまスマートエネルギー」などがあります。

日本初! 自治体連携による再エネの融通/みやま市、肝付町の取り組み

 自治体主導で地域特化型の電力事業を行っていこう、という取り組みは全国各地で行われていますが、その中でも福岡県みやま市と鹿児島県肝付町の連携による先進的な取り組みが注目を集めています。

 その取り組みとは、「両自治体が運営している新電力同士が、電力(再生可能エネルギー)をお互い融通し合い活用していこう」というものです。FITに頼らない再生可能エネルギーの普及を推進し、エネルギーの地産地消による地方創生の実現を目指す自治体主導の新しい取り組みとして期待が高まっています。

 みやま市は2015年3月、日本初の自治体による家庭向け電力売買事業会社「みやまスマートエネルギー株式会社」を設立。一方の肝付町は、太陽光・風力・小水力などの発電施設や木質バイオマスによる熱供給施設があり、再生可能エネルギー活用に関わるさまざまな取り組みを推進しています。

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 将来的には、両者・両地域においてFITに頼らない再エネの普及を進めるため、また地域の再エネを地域で活用するために、自営線網(系統に頼らない自治体所有の電線網)を構築し、「家庭間で再エネを融通することができる地域」「災害時にも電力供給が可能な地域」を作っていく計画とのことです。

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