風力発電の規格を国際基準よりも厳しく、台風や乱気流に対する安全性を向上蓄電・発電機器(1/2 ページ)

経済産業省は風力発電に関するJIS(日本工業規格)を改正した。これまで国際基準と同様に3段階の風速に対して規定していた風車のクラスに新しい区分を設けて、極限の平均風速が50メートル/秒を超える場所を対象に安全性の規定を追加した。合わせて風車が発する騒音の測定方法も見直した。

» 2017年01月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 国内で風力発電システムを設置するためには、電気事業法や建築基準法に準拠する必要がある。設置場所の平均風速などに合わせて風車を選定して発電設備を設計することが求められている。風力発電システムの安全性や環境性に関する規定はJIS(日本工業規格)で決められていて、現在は9種類の規格で構成する(図1)。

図1 風力発電システムに関するJIS。出典:日本工業標準調査会

 このうち風力発電システムの設計要件を規定した「JIS C1400-1」と、騒音の測定方法を規定した「JIS C1400-11」の2種類が2017年1月20日に改正された。特に重要な改正点は、日本特有の台風や乱気流に対する安全性を高めるために、風車の規格に新たなクラスを設定したことだ。

 風車のクラスは「10分平均基準風速」をもとに「I」〜「III」の3段階で規定していたが、新たに最速区分の「T」を追加した(図2)。10分平均基準風速は風車のハブ(中心部)が受ける10分間の平均風速の最大値だ。今後50年以内に再現する可能性がある極限の平均風速を予測したもので、「極値風速」とも呼ぶ。この極値風速の条件下でも安全性を確保できるように規定を改めた。

図2 「JIS C1400-1」で規定する風車のクラス設定。出典:経済産業省

 従来のJISではIEC(国際電気標準会議)が制定する国際規格に従って「I」〜「III」の3段階で風車のクラスを設定してきた。最速の「I」の10分平均基準風速は50メートル/秒以下だが、新設の「T」では57メートル/秒以下の設置場所が対象になる。

 実際に国内では10分平均基準風速が50メートル/秒を超える場所が沿岸地域や離島に多い。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「日本型風力発電ガイドライン」によると、地上70メートルの上空では太平洋の沿岸部や離島、沖縄県の島々で10分平均基準風速が50メートル/秒を超える(図3)。特に台風が発生した時に異常な風速になる可能性が高まる。

図3 全国の10分平均基準風速(地上70メートル)。鹿児島県の離島と沖縄県を除く。「風速差ΔV」は算定方法の違いによる差。出典:NEDO
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