電力会社10社の売上高が前年比8.3%減少、燃料費で稼ぐ時代は終わる電力供給サービス(2/3 ページ)

» 2017年02月01日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

燃料輸入価格の上昇が差損を生み出す

 東京電力の費用の内訳を見ると、燃料費が4560億円の減少で最も大きい(図4)。輸入価格の下落によるものだが、電気料金に反映する時期が4カ月ずれるため、燃料費調整額の減少と比べると1830億円も少ない。LNGや原油の輸入価格が2015年から2016年にかけて下落した後に上昇に転じたことが要因だ。加えて為替レートが2016年の後半から円安ドル高に転じて輸入価格を押し上げた影響もある。

図4 東京電力の費用の内訳(連結決算)。CIF:運賃・保険料を含む燃料輸入価格。出典:東京電力ホールディングス

 費用の中では再生可能エネルギーの買取に伴う納付金が1049億円も増加した点が目を引く。ただし利益には影響を与えない費用である。電力会社は買取費用から「回避可能費用」(再生可能エネルギー以外の電源で発電した場合に相当する費用)を差し引いた金額を国の機関から交付金として受け取る一方、電気料金に上乗せして徴収する賦課金をそのまま国に納付金として支払う仕組みになっている(図5)。

図5 再生可能エネルギーの買取に伴う収入と費用(東京電力の場合)。出典:東京電力ホールディングス

 賦課金で収入が増えた分と同額を納付金として費用に計上するため、利益は差し引きゼロになる。利益の増減要因の中にも、再生可能エネルギー関連の収支は含まれていない。燃料費調整額と燃料輸入価格の減少が利益を大きく左右する構造は電力会社に共通する課題だ(図6)。

図6 東京電力の経常損益の増減要因(連結決算)。CIF:運賃・保険料を含む燃料輸入価格。$/b:ドル/バレル。出典:東京電力ホールディングス

 東京電力と同様に売上高と利益を大幅に減らした中部電力は、燃料輸入(調達)価格の変動に伴う差益が前年の1200億円から320億円へ一気に減少した(図7)。この差益は燃料の輸入価格が下落する局面で発生する一方、上昇する局面では差損に変わってしまう。2016年の後半から差損が発生する状況に転じて、2017年に入ってからも差損が続く見通しだ。第4四半期(1〜3月)の利益も押し下げることになる。

図7 燃料費調整額の期ずれが生み出す差益(中部電力の場合)。出典:中部電力

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