震災からの復興に取り組む熊本県では、以前から再生可能エネルギーの導入を精力的に進めてきた。建築廃材を燃料に利用するバイオマス発電所や、下水の汚泥によるバイオガス発電所が震災の直前に運転を開始している。中小水力発電も活発で、固定価格買取制度の認定量では全国1位に躍進した。
熊本県の北西部にある荒尾市の産業団地の中に、新しい木質バイオマス発電所が2016年4月1日に運転を開始した(図1)。2万平方メートルを超える敷地に、バイオマスボイラーや発電機、燃料になる木質チップの倉庫を備えている。地元の製材会社や廃棄物処理会社が共同で会社を設立して、再生可能エネルギーの発電事業に取り組む地域主導のプロジェクトだ。
発電機の出力は6.25MW(メガワット)に達する(図2)。発電所で消費する電力を除いた5.5MW分を固定価格買取制度で売電する方針だ。1日24時間の連続運転で、1年に330日の稼働を予定している。年間で売電できる電力量は4400kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万2000世帯分に相当する。荒尾市の総世帯数(2万4000世帯)の5割をカバーできる。
燃料になる木材は周辺地域の森林で発生する間伐材や林地残材のほかに、製材後の端材や建築物の廃材も活用する(図3)。合わせて年間に7万トンの木材を消費する予定だ。このうち1割を建築廃材が占める。建築廃材は間伐材や製材端材と比べて水分量が多く、燃焼に必要な水分の調整に利用している。
総投資額は34億円にのぼり、そのうち12億5700万円を熊本県から借り受けた。売電収入は燃料に使う木材の比率によるが、年間に10億円を超える見通しだ。発電所では運転管理や燃料供給などで合計24人が勤務する。バイオマス発電を通じて地域の林業を活性化するのと同時に新たな雇用を生み出した。
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