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» 2017年02月28日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2016年版(44)大分:資源に影響を与えない地熱発電所、日本一の温泉県で動き出す (2/3)

[石田雅也,スマートジャパン]

低温の熱水で発電量を増やす

 九重町では九州電力の大規模な地熱発電所が3カ所で稼働している。そのうちの1つ、「滝上(たきがみ)発電所」で新しい発電設備の建設が始まっている(図4)。地中からくみあげる蒸気と熱水は従来のままで、地熱発電の導入量を増やす試みだ。

図4 「滝上発電所」の全景。出典:九州電力

 滝上発電所は1996年に運転を開始して、発電能力は2万7500kWにのぼる。年間の発電量は1億9700万kWh(キロワット時)に達して、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると5万5000世帯分に相当する。地中からくみ上げた蒸気と熱水のうち、高温の蒸気だけを発電に利用して、低温の熱水は使わずに地中に戻してきた(図5)。

図5 「滝上発電所」の蒸気供給設備(画像をクリックすると発電設備も表示)。出典:九州電力

 滝上発電所では蒸気の供給を出光興産グループが担当して、その蒸気を使って九州電力が発電する分業体制をとっている。出光興産は発電に使っていなかった低温の熱水を利用できる地熱発電所を新たに建設中だ。低温でも蒸発する沸点の低い媒体を使って発電できる「バイナリー方式」を採用する。

 発電能力は5050kWで、2017年3月中に運転を開始する予定だ。バイナリー方式の地熱発電所では国内最大の規模になる(図6)。年間の発電量は3100万kWhを見込み、一般家庭の8600世帯分に匹敵する。この地熱発電所だけで九重町の総世帯数(3900世帯)の2倍以上に相当する電力を供給できる。

図6 「滝上バイナリー発電所」の完成イメージ。出典:出光興産

 九重町にある地熱発電所の中で最も古い「大岳(おおたけ)発電所」でも、新たな取り組みが始まった(図7)。大岳発電所は1967年に運転を開始して、ちょうど50年目を迎えている。地熱を取り出す現在の設備を生かしたまま、発電機やタービンを更新して発電能力を増強する。地下からくみ上げる蒸気と熱水の量は変えずに、再生可能エネルギーの電力を増やす取り組みだ。

図7 「大岳発電所」の所在地。出典:九州電力

 現在の発電能力は1万2500kWだが、同じ量の地熱資源を使いながら1万4500kWへ引き上げる。従来は高温の蒸気だけを使って発電する「シングルフラッシュ方式」を採用していた。新しい設備では低温の熱水も組み合わせて蒸気の量を増やす「ダブルフラッシュ方式」に進化させる(図8)。

図8 更新後の地熱発電設備の仕組み(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 発電設備の更新には環境影響評価の手続きを実施してから工事に着手する必要がある。新しい発電機やタービンを収容する建屋は敷地内の別の場所に建設して工事期間を短縮する。約2年間の工事の後に、試運転を経て2020年12月に営業運転を開始できる見通しだ(図9)。

図9 設備更新後の「大岳発電所」のイメージ(画像をクリックすると周辺地域も表示)。出典:九州電力

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