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» 2017年03月14日 09時00分 公開

小水力発電と海流発電が離島に、天候に左右されない電力を増やすエネルギー列島2016年版(46)鹿児島(4/4 ページ)

[石田雅也,スマートジャパン]
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未利用の熱水から8300世帯分の電力

 地熱発電でも新しいプロジェクトが進んでいる。温泉地で有名な指宿市(いぶすきし)にある九州電力の「山川発電所」の構内に、グループ会社の九電みらいエナジーが地熱発電所を新設する(図13)。

図13 「山川発電所」の遠景と所在地。出典:九州電力

 1995年から運転を続けている山川発電所では、地下からくみ上げた蒸気と熱水のうち高温の蒸気だけを発電に利用して、低温の熱水は地下に戻していた。隣接する場所に建設中の「山川バイナリー発電所」では熱水で発電できる点が特徴だ(図14)。

図14 「山川バイナリー発電所」の建設地。出典:九電みらいエナジー

 低温の地熱でも発電が可能なバイナリー方式を採用した。山川発電所から送られてくる100℃前後の熱水から蒸気を取り出して、沸点の低い媒体(ペンタン)を蒸発させる方法だ(図15)。蒸発した媒体で蒸気タービンを回して発電する。

図15 バイナリー発電の仕組み。出典:九電みらいエナジー

 発電能力は5MWで、既設の山川発電所(30MW)の6分の1である。2018年2月に運転を開始する予定だ。これまで利用していなかった熱水を使って、年間に3000万kWhの電力を安定して供給できる。一般家庭の8300世帯分に相当する電力量になり、指宿市の総世帯数(1万9000世帯)の4割以上に相当する。

 九電みらいエナジーは発電した電力を固定価格買取制度で売電する方針だ。買取価格は40円(税抜き)で、年間に12億円の売電収入を見込める。買取期間の15年の累計では180億円に達する。未利用の熱水からCO2を排出しない電力を大量に作り出せるメリットは大きい。

 山川発電所の構内にバイナリー発電所を建設する以前に、九州電力は2年間かけてバイナリー発電の実証試験に取り組んでいる。熱水を使って250kWの発電能力がある小規模な設備だ(図16)。建設中の商用設備と比べて20分の1の規模だが、バイナリー方式による発電量などを検証して商用化につなげた。

図16 実証試験用の小規模地熱バイナリー発電設備。出典:九州電力、川崎重工業

 地熱資源が豊富な指宿市では、このほかにも地熱発電所を建設するプロジェクトがいくつか進んでいる。ただし新たに地下を掘削して蒸気と熱水をくみ上げる場合には、温泉資源に影響を与える懸念がある。地元の温泉事業者のあいだでは地熱発電に反対する動きも見られる。

 指宿市は2015年3月に「温泉資源の保護及び利用に関する条例」を制定して、市内で地熱発電を実施する事業者に対して事前に計画書の提出を義務づけた。市の同意を得なければ、地熱発電所の建設だけではなく資源量の調査も実施できない。地域の貴重な資源を利用するうえで欠かせないプロセスである。

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2015年版(46)鹿児島:「豚の排せつ物からバイオ燃料を、火山の島では地熱発電と水素製造も」

2014年版(46)鹿児島:「水力と地熱を中核の電力源に、スマートグリッドで再エネを増やす」

2013年版(46)鹿児島:「南国の離島に豊富な自然エネルギー、火力依存からの脱却を図る」

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