工業規模にまで生産量を増やすことを前提に技術開発を進めた。具体的には、市販の樹脂シートを利用し、その上に太陽光から電力を生み出す「光吸収層」と、電子を電極に受け渡す「電子輸送層」を印刷した(図2)。30cm幅のPET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂の上にITO(酸化インジウムスズ)薄膜電極が成膜された市販のロール状シートを用いた。
ロールツーロール法を実行するためには製造装置も開発しなければならない。Sollianceに参加するオランダVDL Enabling Technologies GroupがオランダSmit Thermal Solutions、ドイツBosch Rexrothの協力の基、「Solliance dual R2R coating line」(図3)を作り上げた。
ロールツーロール法で製造コストを下げる際には幾つかの条件がある。重要なのは単位時間当たりの製造量(スループット)を決める製造速度と、量産工場全体のコストを決める製造環境だ。
今回の製造速度は毎分5メートル。成膜(印刷)、乾燥、アニーリング(焼成)プロセスを含む速度だ。太陽電池として高速である。
製造環境は大気圧、大気雰囲気下。真空環境や特別な雰囲気ガスは使っていない。印刷工程は全て120℃以下で実行しており、加熱に必要なエネルギーを抑えることができる。
SollianceのプログラムディレクタであるRonn Andriessen氏は発表資料の中で今後の開発計画を明らかにしている。「今回の成果は、大面積サイズのペロブスカイト太陽電池モジュールへの第一歩であり、重要なステップだ。工業的に製造可能であることはもちろん、高効率で長寿命、低コストという条件を満たしていなければならない。今回の成果によって、低コスト材料と製造プロセスを適用しつつ、変換効率を15%以上にアップスケールできると確信している。加えて実環境下で安定性(寿命)を高めるための開発も続けていく」。
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