オランダSolliance*1)は、2017年3月9日、量産に適する低コストな手法を用いて、変換効率が12.6%*2)のペロブスカイト薄膜太陽電池セルを試作したと発表した(図1)。
*1) Sollianceはオランダ、北ベルギー(フランダース)、ドイツにまたがり、多数の企業や研究機関が協力する薄膜太陽電池の研究開発団体。ペロブスカイト太陽電池とCIS太陽電池を主な研究開発対象としている。
*2) ペロブスカイト太陽電池モジュールは外部に出力する電圧を高めるため、細かいセルを形成して用いる(パターニング)。12.6%とは面積0.1平方メートルのセルに5分間光を照射した際の変換効率。
ペロブスカイト太陽電池セルの世界記録は22.1%*3)。12.6%という数字はかなり低く見える。今回の発表にはどのような意味があるのだろうか。
太陽電池の生産量のうち、約9割を占めるのがシリコン(ケイ素)の薄板を用いる結晶シリコン型だ。量産規模が大きいため製造コストが低く、変換効率も高い。
結晶シリコン型以外の太陽電池が「巨人」に対抗するには製造コストと変換効率という2つの戦線で連勝する必要がある。薄膜太陽電池の代表であるCIS太陽電池とCdTe太陽電池はよい勝負をしている。
Sollianceの狙いは第一に製造コスト。大面積モジュールを低コストで量産する手法を開発することで、結晶シリコン太陽電池が適用しにくい市場を抑える。柔軟なシートにロールツーロール法で印刷できれば、曲面形状の太陽電池や、建物用の表面部材と一体化(BIPV)した太陽電池への道も開ける。
そのために印刷と同様の帯状のシートを利用し、太陽電池を作る技術開発を進めてきた。印刷物の量産コストを引き下げるには、コピー機のように1枚1枚印刷するよりも、ロール状の紙を引き出しながら印刷していくロールツールロール法が優れる*4)。これを太陽電池で実現する。
*3) 面積0.09平方センチメートルのセルにおける記録。
*4) 結晶シリコン太陽電池セルと同じ形状をとり、既存の結晶シリコン太陽電池モジュールに適合しやすい硬質なペロブスカイト太陽電池の開発もSollianceは進めている。2016年5月現在の変換効率は10%。
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