フライホイールと蓄電池、アラスカの街を照らす蓄電・発電機器(1/2 ページ)

大規模風力発電所の電力を利用して孤立した都市の電力を得る。このような事例では、急速な電力変動を蓄電池単体で吸収するよりも、フライホイールを組み合わせた方がよい場合がある。スイスABBがアラスカの電力事業者と共同でハイブリッド蓄電システムを立ち上げた。

» 2017年03月28日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 重量物が高速回転することで運動エネルギーを蓄え、高速応答が可能な蓄電池として働く「フライホイール」。このフライホイールを大容量の蓄電池と組み合わせて電力を安定供給する。「高速応答+大容量」というハイブリッド蓄電システムを実現したのが、アラスカの事例だ。

 スイスABBの日本法人であるABBは2017年3月13日、アラスカ州の州都であるアンカレッジ近郊で、このような特徴を備えたChugach Electric hybrid storage projectを開始したと発表した(図1)。いわゆるマイクログリッドである。

図1 アンカレッジ近郊の風景 出典:ABB

 アンカレッジの沖合4キロメートルに浮かぶファイア島にはアラスカ州初の洋上風力発電所(出力17メガワット、MW)が完成している。現地の電力事業者Chugach Electric Associationには課題があった。風力発電の出力変動と市内の電力需要をそれぞれ吸収する必要があるのだ。

 そこで、ABBのハイブリッド蓄電システムを採用した。出力2MW、容量500キロワット時(kWh)の蓄電池で比較的長時間の蓄電をまかなう。加えて風力発電で起こりがちな短周期の変動をフライホールで吸収する(図2)。「出力は1MW、容量は16.5メガワット秒(MWs)」(ABB)。1MWの出力を16.5秒間継続できる計算であり、急激に電力が変動した際に役立つ。

 蓄電池だけで高速応答に対応しようとすると、蓄電池の並列化が必要になり、割高になってしまう。さらに、高速応答を続けると、蓄電池の寿命が短くなってしまう。これをフライホイールでカバーする形だ。

図2 フライホールの設置イメージ 中央の円筒形の構造がフライホイール本体、右側は制御装置 出典:ABB
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