10年以上の歴史を持つ「老舗新電力会社」3分で分かるこれからの電力業界(10)(2/3 ページ)

» 2017年03月30日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

期待される「老舗新電力」のノウハウと資産

 ここで、FITが開始された2011年以降の新電力企業の周辺事情を見ておきましょう。

 FITは、わが国における再生可能エネルギーの普及を牽引してきましたが、その費用負担が膨れ上がっていることが問題になっています。そのため、特に太陽光発電では買取価格が年々下落を続けており、太陽光発電を主な事業とする企業は、太陽光以外の新しい電力事業にシフトする動きが活発になりました。

 また、家庭部門における電力自由化への期待から電力小売に参入する流れも起こりました。電力小売を事業とする企業は2014年度以降に急増しているので、大半の企業は、家庭向けの電力自由化が間近に迫ってきた頃からの歴史となります。

 老舗新電力会社が家庭向けの自由化が始まる2016年以前から電力小売を開始した要因としては、“事前のトライアル”という側面もあります。

 いきなり家庭向けの電力小売を始めようとすると、需給・請求管理などの業務もそこで初めて行うことになるので、複雑な業務を一気に立ち上げなければなりません。そうすると、業務フローの中でミスが頻発する可能性が高くなります。そこで、高圧の部分から業務をある程度こなせるようになっておくために、事前に試験的に電力小売を始めておこうと考えたのです。

 他の事業同様、電力小売事業においても長年の経験やノウハウが非常に重要であり、老舗の新電力企業はそういった経験やノウハウをいち早く培ってきました。また資産も潤沢に有しています。電力小売の販売量ランキングでも上位に位置する新電力は老舗が多いのはそのためでしょう。老舗の新電力会社は、これまで培ってきた堅固な基盤を生かし、今後の電力業界の発展に大いに寄与することが期待されます。

事例紹介:多様な電源開発とサービスを提供する「サミットエナジー」

 サミットエナジーは、住友商事グループの国内電力事業会社として、2004年に設立された新電力会社です。同年の7月に電力小売事業を開始しており、特別高圧部門が自由化された時期からの老舗企業といえます。

 同社は、自社グループによる発電所や卸電力取引市場などの電気をベストミックスすることにより、コスト競争力を電気に持たせる工夫をしています。自社で保有している発電所としては、バイオマス発電所である「サミット明星パワー」や、石炭発電所である「サミット小名浜エスパワー」といったものがあり、こうした多様な電源を活用して電力供給をしています。このような電源の活用法により、2016年3月における電力販売量の実績値では9位に位置しています。

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