10年以上の歴史を持つ「老舗新電力会社」3分で分かるこれからの電力業界(10)(3/3 ページ)

» 2017年03月30日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]
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 また、電力会社向けの卸供給事業として、風力発電である「サミットウインドパワー 鹿嶋」があります。運営受託している発電所としては、太陽光発電である「大阪ひかりの森プロジェクト」という設備も保有しており、多岐にわたる種類の発電所を運営しています。

 また老舗だけに発電・売電以外の事業も多彩に展開しており、「グリーン電力証書の販売」もその一つです。グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーにて発電された電力の「環境負付加価値」部分を取引可能な証書としたものです。例えば、ヤマダ電機はこの「グリーン電力証書」を活用し、サミットエナジーとグリーンPPSによる電力供給契約を締結しています。

 特別高圧・高圧の顧客に対しては、「電力の見える化サービス」も提供しています。電気使用量をグラフで確認することが可能で、データのダウンロードもできます。サービスの利用者は、インターネットを通じて日々の使用状況をチェックすることができます。

 さらに家庭部門への電力事業に対しては、「さまざまなパートナーを通じて電気を届ける」という形のビジネス展開をしています。サミットエナジーではなくパートナー会社などが、じか接個人の需要家と電気需給契約を締結する、というものです。

 例えば、ジュピターテレコムとサミットエナジーは、家庭の電気料金を削減する電力サービス「J:COM電力」を、J:COMサービスエリアの一戸建ておよび小規模集合住宅に提供しています。J:COMは電力販売や問い合せ対応などを行い、サミットエナジーは電力調達および需給調整を担うのです。これは、サミットエナジーが長年培ってきた電力事業に関するノウハウを生かした、家庭部門への電力参入に対する一つのビジネスの形となります。このように、長年の事業経験は電力ビジネスの幅を広げられる可能性があると言えます。

会社選びのチェックポイント

 老舗の新電力会社の特徴は、ベンチャー的な革新性と、既に一定の事業実績を収めていることによる保守的な側面が同居しているという点です。将来的な事業の継続可能性はまだまだ未知数の部分もあるでしょう。

 従って、成長可能性をどのように見極めるかが重要になってきますが、しっかりとその会社の事業内容、経営状況について調べておくだけでなく、自分が入社して何をやるのかというビジョンを明確にしておくことが重要です。既に老舗とはいえまだ発展途上の会社であり、会社の成長と自分自身の成長を重ね合わせられることが重要になってくるからです。

 会社選びの際にはその会社の実像をきちんと調べて把握し、その会社の事業内容が自分の志向や興味と合致しているか、自分の目指す方向性に合っているかを確認しましょう。

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本稿は『3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編― 5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』(江田健二 /一般社団法人エネルギー情報センター 著)からの転載です(アイティメディアの表記ルールに基づいて原本から表記を一部変更しています)。

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著者:江田健二氏
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。 富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。 アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクトなどに参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。 RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。

一般社団法人エネルギー情報センター
エネルギーに関する正しい情報を客観的に分かりやすく広くつたえること、ITとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造することを目的に設立、運営。多くの人・組織が共に学び、考え、協力していく『場』となるプラットフォームを提供していきます。
URL http://eic-jp.org/


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