電力×エコ&ソーシャル――社会・環境貢献型電力事業3分で分かるこれからの電力業界(8)(1/4 ページ)

「電力小売業界」への就職・転職を目指す方に、急速に変化・多様化する業界動向を分かりやすく解説。今回は、価格競争ではなく社会・環境価値で差別化を図り、エコ推進やソーシャルビジネス(社会貢献型ビジネス)を通して“社会や環境に貢献している”というイメージを訴求する「電力×エコ&ソーシャル」にフォーカスする。

» 2017年03月02日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

トレンドワード「電力×エコ&ソーシャル」

社会&環境貢献重視のエコ推進派、安定よりチャレンジを求めるアナタにお勧め!


価格競争ではなく、社会・環境価値で差別化

 環境問題に対する社会の関心が高まりつつある昨今、自社ブランドの価値を高めるための手法として、エコ推進やソーシャルビジネス(社会貢献型ビジネス)を通して“社会や環境に貢献している”というイメージを訴求する電力小売会社が増えつつあります。

 エコを企業理念として訴求する会社であれば、販売している電気の発電方法として再生可能エネルギーの割合が高いことを売りにしたり、太陽光発電システムの設置とセットになったプランを販売するなど、価格以外の面でメリットを訴求。「エコ推進派の方はぜひうちの電気を買ってください」と消費者にアピールしているのです。

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 このように電力小売会社が環境価値を前面に押し出す際、単純に再生可能エネルギーによる発電所から電気を買って販売するだけでなく、各種制度を上手く活用して効果的に社会・環境への貢献度を高めている会社もあります。

 こうしたエコ、環境貢献に特化した電力会社は、再生可能エネルギーの普及・拡大とともに、今後ますます大きな注目を集めていくことになるでしょう。ただし、「エコ」を前面に押し出している企業は数多くありますが、各社の環境配慮への取り組み方は一律ではありません。

 つまりこの分野に属する企業では、需要家が求める形の「環境配慮」を的確に汲み取り、料金プランなどへ反映させるビジネスの目が必要となります。

事例紹介:再エネ、環境貢献にこだわる会社・団体

 「太陽光発電、風力発電などの発電所を作る」「再生可能エネルギーの電力を優先的に販売する」といった形で環境貢献に取り組む会社は多いですが、再生可能エネルギーの推進や環境貢献への取り組みにはさまざまな形があります。ここでは独自の発想とスタイルで再生可能エネルギー推進を後押しする2つの企業・団体をご紹介します。

太陽光発電システムを無料で提供する「じぶん電力」

 近年、FITという再生可能エネルギーの普及を後押しする制度の影響で、太陽光発電の導入が急速に進んでいます。そんな中、2016年4月から始まった電力自由化に伴い、この太陽光発電の価値を新しい形で提供するサービスが出てきています。そうしたサービスの一つが、日本エコシステムが提供する「じぶん電力」です。

 同社は、電力自由化の始まる前から太陽光発電の販売・施工実績のある企業ですが、住宅用だけではなく、工業施設や産業用物件・幼稚園などの幅広い実績があり、2016年1月時点で、36000棟を超える施工実績を持ちます。

 こうしたバックグラウンドを活用した料金プラン「じぶん電力」は、プラン申請者の家の屋根に太陽光発電システムを設置し、そこで発電された電力をプラン申請者自身が利用できる仕組みとなっています。ただし、太陽光発電システムの導入費は非常に高額であるため、初期費用をどうするか、といった問題が出てきます。一般的な家庭の屋根であれば、太陽光発電システムの設置には数百万円が必要なケースが多いですが、そうした規模の初期費用は、設置希望者にとって非常にハードルが高いです。

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