渋谷区と東京電力ホールディングスは、IoT技術を活用した見守りサービスの実証を2017年6月から開始する。将来的には他地域にも拡大し、社会インフラサービスとして展開する狙いだ。
渋谷区と東京電力ホールディングス(東電HD)は、IoTを活用した見守りサービスの実証を2017年6月から開始すると発表した。ビーコンを搭載した専用端末を持つ高齢者や子どもの位置情報履歴を、家族がスマートフォンやPCから把握できる仕組みだ。
ビーコンの電波を受信する基地局は、コンセントにつなぐだけで設置できる端末を提供する。無料アプリをインストールしたスマートフォンも基地局として活用可能。公共施設や東京電力が持つ電柱などの設備も基地局にして、サービスの精度を高める。
また東電HDはキリンビバレッジバリューベンダーと協力し、渋谷区内に設置している自動販売機に基地局端末を取り付ける。正確な時期は決まっていないとしているが数カ月間の実証を行い、渋谷区でどれだけ基地局が必要かを検証するという。
今回の取り組みの主体は東電HDが担い、大阪府箕面市や福岡県福岡市の小学校などにおいて見守りサービスの運用実績を持つotta(オッタ)がIoTシステムの提供を行う。
サービス提供の窓口となるのは渋谷区で、同区内の小学生には無償で専用端末を提供する。対象となるであろう高齢者には、渋谷区から直接アプローチもするようだ。価格に関しては「サービスの有効性が確認できるまで無償で提供する。詳細な料金体系は決まっていないが、継続して利用を希望する方には有償で提供する予定だ。いずれにしても、ワンコイン(500円)で基本的なサービスを提供できるようにしたい」(東電HD)とした。
渋谷区の長谷部健区長は「私たちが進めている高齢者福祉政策において、高齢者の見守り対応は大きな課題の1つである。認知症高齢者の徘徊は特に社会問題化しており、発見の遅れは大きな事故につながる可能性もあることから、早期発見が必要だ。そのためICT機器の導入によって、家族の安全・安心につながるサービスの提供を検討してきた。東電HDとottaからの提案は、渋谷区のニーズに非常にマッチしていた」と語る。
東電HD 常務執行役の見學信一郎氏によると、見守りサービスの提供は同社の電力設備が「社会に役立つものとして活用できないか」という思いから始まったという。
今後は位置情報だけでなく、三井住友海上火災保険による見守り対象者の交通事故や賠償事故の補償など、さまざま企業との連携による付加価値サービスの拡充を目指す。他地域へのサービス拡大も予定しており、見學氏は「社会問題の解決につながる新しいサービスを創出することで、福島復興への責任を果たしていきたい」と語った。
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