廃プラスチックを燃料化、重油より安くエネルギーを得る自然エネルギー

北海道札幌市に本社を置くエルコムは、「2017NEW環境展」(2017年5月23〜26日/東京ビッグサイト)で、廃プラスチック燃料化システム「イーペップ」を展示した。廃プラスチックおよび廃発泡スチロールを、ペレット燃料にすることで売却や再エネルギー化できるシステムだ。

» 2017年05月26日 09時00分 公開
[庄司智昭スマートジャパン]

廃プラスチックを自社内のエネルギーに

 捨てるのに困っていた廃プラスチックを、自社内でエネルギーとして利用できる――。北海道札幌市に本社を置くエルコムは、2017年5月23〜26日に東京ビッグサイトで開催されている「2017NEW環境展」で、同社が展開する「イーペップ」を展示した。

 イーペップは廃プラスチックおよび廃発泡スチロールを、ペレット燃料にすることで売却や再エネルギー化を可能にするシステムである。エルコムが提供している複数の機器で構成されており、展示会場では発泡スチロール減容機「スチロス」と、発砲スチロール固形燃料製造機「ステラ」を用いた実際のデモが紹介されていた*)

*)廃プラスチックの場合は、熱可塑性樹脂減容機「プラロス」を用いる。

発泡スチロール減容機「スチロス」と発泡スチロール固形燃料製造機「ステラ」。スチロスで廃発泡スチロールを最大25分の1に減容した後、ステラでさらに40分の1に減容してペレット燃料化する (クリックで拡大)

 スチロスでは大型の廃発泡スチロールを最大25分の1に圧縮。溶剤や熱を加えずに摩擦熱で減容するため、ぬれたままでも処理が可能である。次にスチロスで圧縮した処理物を、ステラでさらに40分の1に減容してペレット燃料化する。生成したペレット燃料を、樹脂系固形燃料ハイブリッドボイラー「イーヴォル*)」に搬送する流れだ。これにより廃発泡スチロールから温水や温風、蒸気といったエネルギーを得ることができる。

*)イーヴォルの出力は1時間当たり6万kcal、燃料消費量は同約10kgである。ハイブリッド型のため、灯油とA重油も併用可能だ。給湯温度範囲は70〜85℃。サイズは1770×1370×2000mmとなっている。

 発砲スチロールや廃プラスチックは石油由来成分のため、生成したペレット燃料は1kg当たり8800kcalと、化石燃料と同等の高い発熱量がある。エルコム新事業開発部で部長を務める相馬嵩央氏によると、北海道の農家にイーペップを導入した事例では、ビニールハウス内の温度を外気温と比べて約10℃上昇保持することに成功した。

 また資源エネルギー庁によると、通常のボイラーの燃料として使用されるA重油の過去10年間における平均価格は1kg当たり80円。樹脂ペレットの販売平均価格は1kg当たり約40円のため、イーヴォルを活用することで約50%の燃料費削減にもつながるという。廃プラスチック処理にかかわる運搬費や処理費、委託費などの削減も可能だ。

システム全体のイメージ (クリックで拡大) 出典:エルコム

 イーペップは、エルコムと同じく北海道札幌市に本社を置くサントレが提供しており、同社がペレット燃料の買い取りと供給も行っている。サントレはエルコムと西原資源、名濃の3社が出資して設立された企業である。買い取り価格は、数量と排出エリアによって決まるという。なお相馬氏は、サントレの代表取締役も務めている。

 「2016NEW環境展」の展示では、生成できるエネルギーが温水と温風に限られていた。今回の展示では蒸気に対応。将来的には「発電」にも対応するとした。

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