電化社会に必要な技術とコストは? 2050年のEVを米機関が予測電気自動車(1/2 ページ)

米NRELは、広範囲の生活領域で電化が進んだ将来の米国について予測し、2050年までに予想される電化社会に必要な技術とコストを試算した。

» 2018年01月18日 07時00分 公開
[松本貴志スマートジャパン]

2035年のEVバッテリー容量単価は200ドル以下

 米国エネルギー省NREL(National Renewable Energy Laboratory:国立再生可能エネルギー研究所)は、広範な生活領域で電化が進んだ将来の米国エネルギーシステムについて予測を行い、2050年までに予想される電化社会に必要な技術とコストを試算した。

NRELが行ったElectrification Futures Study 出典:NREL

 本レポートはNRELを含めた米国研究機関によって行われるEFS(Electrification Futures Study:電化未来調査)の初回報告書となる。EFSは、将来の家財や社会インフラの進展に必要な技術や性能の試算、電力需給の推定、社会電化の進展に対する利点・問題点の洗い出しを最新の統計や学術文献調査、電力需要シミュレーションなどにより行うもの。今回のレポートを皮切りに今後2年間で、交通、住宅・商業用建造物、産業など米国の全経済部門においてさまざまな調査を行うとする。

 調査では、電化に関する技術の開発速度が「遅い(Slow)」、「中間(Moderate)」、「速い(Rapid)」の3条件で進展したとして仮定し、それぞれの開発速度での社会電化の進展度合いを予測している。「中間」の開発速度は、現時点の研究レベルで想定される開発速度よりも速いものとなっており、「遅い」開発速度が現在想定される開発速度に対応するという。これは、電化に関する研究がどの分野においても盛んに実施されており、現時点では想定できないイノベーションが生まれることで、社会の電化速度が加速することを考慮したためだと説明する。

 交通分野では、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(BEV)といった乗用車や電気トラック、電気バスの各車種において車両コストや電費などを試算している。本稿では、乗用車(中型セダンを想定)の試算について紹介する。

 BEVに搭載されるバッテリーの容量単価推移は、図1の通りどの開発速度においても低下傾向にある。2016年時点で1kWh(キロワット時)当たりのコストが273ドルと推定されているが、「遅い」開発速度では年間1%、「中間」の開発速度では年間2%、「速い」開発速度では年間4%のコスト下落を想定する。2035年時点で、「遅い」開発速度で1kWh当たり200ドル、「速い」開発速度で100ドルを見込む。しかし、それ以降では容量単価下落が踊り場に差し掛かり、「速い」開発速度で2038年ごろに到達する80ドルが、容量単価において当面のゴールになるだろうと指摘する。

図1:1kWh当たりのバッテリーコスト推移 出典:NREL
青色線は「遅い」開発速度、橙色線は「中間」の開発速度、緑色線は「速い」開発速度の容量単価下落を示す近似曲線
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