図2は、車両コスト(長期均衡での小売車両価格)をパワートレイン別および航続距離別で比較している。図中のICEVはハイブリッド車(HV)を“含まない”ガソリンエンジン車、「PHEV 25」や「BEV 100」のようにパワートレイン種別の後ろに記載する数値はバッテリーでの航続距離(単位:マイル)を意味している。
ICEVの車両コストは2050年までほぼ変化しない見込みだが、PHEVおよびBEVは車両コストの低減が進むと予想されている。特に航続距離25マイルクラスのPHEVは、2025年頃にガソリン車の車両コストとほぼ同程度になると見込まれ、BEVについても先述のバッテリー価格下落に伴って車両コスト低下が期待できる。航続距離300マイルクラスのBEVでは、車両価格に占めるバッテリー価格の割合が高いため、開発速度の違いによって予想コストに大きな差が生じている。
図3は、パワートレイン・航続距離別でエネルギー効率(Main Efficiency:燃費・電費)を比較したもので、PHEVのみ複合燃費(Aux. Efficiency)を示している。エネルギー効率においても今後さらに進展があると予想され、開発速度の違いによって予想に大きく差異が生じているが、PHEV・BEVでは最大1.8倍程度の効率上昇があるとみられる。
図4は、車両・メンテナンス・電気など走行に必要なコストを走行距離で割ったLCOD(Levelized Cost of Driving:均等化走行原価)をガソリン車を基準として、PHEV・BEVの差異を示したものとなる。PHEV 25では「速い」開発速度の場合、2026年頃にガソリン車よりも低いライフサイクルコストを達成することが可能となる。
シティコミューターのような航続距離の短いBEV 100では、「遅い」開発速度の場合でも2031年頃にはガソリン車以下のライフサイクルコストを達成できるという。また、航続距離がガソリン車クラスとなるBEV 300では、「速い」開発速度でのみ2050年以前の2034年頃に達成できる見込みだ。
上記で紹介した乗用車分野以外にもEFSレポートでは、住宅・商業用建造物の空調や温水器、産業の各製造工程を電化した場合のコストや影響を試算している。レポートは、NRELのWebページから無償で閲覧することができる。
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