容量2倍のリチウムイオン電池を実現、新しい負極材料を開発蓄電・発電機器

物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループが、酸化マンガンナノシートとグラフェンを分子レベルで交互に重ねた、リチウムおよびナトリウムイオン二次電池の負極材料を開発。

» 2018年02月15日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 物質・材料研究機構(NIMS)は2018年1月、酸化マンガンナノシートとグラフェンを分子レベルで交互に重ねた材料を合成し、リチウムおよびナトリウムイオン二次電池の負極材料として使うことで、従来の2倍以上高い充放電容量と、長いサイクル寿命を両立させることに成功したと発表した。二次電池の高容量化と長寿命化を両立する新しい負極材料として、今後の応用が期待される。

 二次電池の高容量化が求められる中、現在負極に使われている炭素材料に代わる材料として、高い理論容量を持つ遷移金属酸化物に注目が集まっている。特に層状構造の酸化マンガンは、分子1層までバラバラにはく離したナノシートにして負極に使うことができれば、表面すべてが活性部位となるため、大幅に容量を向上できると考えられているという。しかし、酸化マンガンは充放電を繰り返すと構造が壊れやすく、しかもナノシートは団子状に凝集しやすいという課題を抱えていた。

 そこでNIMSの研究グループは、溶液中に分散させた酸化マンガンナノシートとグラフェンを混ぜ合わせ、1層ずつ交互に積層させたミルフィーユ構造の複合材料を合成した。酸化マンガンとグラフェンはともに負に帯電しているため、通常は反発し合う。そこで、研究グループが2015年に開発した技術を使い、グラフェンを化学的に修飾して正に帯電させることで、溶液を混ぜるだけで交互に積層させることに成功した。

酸化マンガンナノシート(赤・青)とグラフェン(緑)の複合材料構造の模式図 出典:NIMS

 この材料をリチウムイオン二次電池の負極として用いたところ、負極容量を0.1A/gの電流密度で1325mAh/gと従来比で2倍に高めることができた。さらに、5000サイクル充放電を繰り返しても、1サイクル当たりの容量減少はわずか0.004%だったという。この特性は、グラフェンで挟むことで、充放電によって壊れやすい酸化マンガンの構造が保持されるとともに、電極材料全体の伝導性が改善されたためとしている。

 研究グループは今回の成果について「これまでに報告されている金属酸化物系負極材料の中で最も高い容量と長いサイクル寿命」としており、二次電池以外にも、スーパーキャパシタや電極触媒など多くのエネルギー貯蔵および変換システムに大幅な性能向上をもたらすことが期待されるとしている。

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