スマートエネルギーWeek 2018 特集

世界で広がる洋上風力、日本での導入拡大に必要なものとは?自然エネルギー(1/2 ページ)

日本風力発電協会(JWPA)が、国内における洋上風力の導入推進に向けた提言を取りまとめた。今後、洋上風力を円滑に導入するために必要なことはなにか? 同協会の理事である加藤仁氏が語った。

» 2018年03月08日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 このほど開催された「第6回 国際風力発電展」(「スマートエネルギーWeek 2018」無い、2月28日〜3月2日、東京ビッグサイト)の特別講演に、日本風力発電協会(JWPA)理事の加藤仁氏が登壇。「洋上風力発電の導入推進に向けて」をテーマに、再生可能エネルギーの中で、国産の大型電源として注目されている洋上風力発電の動向を語った。さらに、2月28日にJWPAが取りまとめた洋上風力発電の導入推進に向けた提言についても紹介した。

日本風力発電協会(JWPA)理事の加藤仁氏

 現在、日本の電力の自給率は6%程度で、エネルギーセキュリティが確立されているとはいえず、この改善が喫緊の課題となっている。この問題を解決するための電源として、今後大きな導入ポテンシャルがある再生可能エネルギー電源として大きな期待がかけられているのが洋上風力発電だ。

 洋上風力発電が注目を集めている理由は、陸上よりも風況が良く、土地契約が少ないことから大型タービンを導入しやすいなど、大型化が可能なこと。また、年間1〜2GW(ギガワット)の継続的導入によって風力発電設備のサプライチェーンが形成され、風車基盤、タワー、ブレードの製造から設置工事、保守までを含めた長期安定的な新産業の創出も期待されている。さらに、加藤氏は国内で10GWの洋上風力発電の導入が実現した場合の直接投資額は5〜6兆円程度にのぼり、2030年までの累計で13〜15兆円の経済波及効果と、8〜9万人の雇用創出が見込めるというJWPAの試算を紹介した。

洋上風力発電の導入による経済効果 出典:JWPA

 世界的に洋上風力の導入が進んでいるのは英国、ドイツ、オランダ、デンマーク、ベルギーなどの欧州諸国だ。この5カ国が世界の洋上風力全体の9割近くを占めており、現在も年間1〜2GWの規模で導入が進んでいるという。これには北海油田があることにより、洋上への設備の設置に関するノウハウやインフラがあるというアドバンテージが寄与しているようだ。

 洋上風力発電の導入が始まった当初、風車は陸上向けのモデルを転用したものが採用されていた。しかし、ここ数年は7〜8MW(メガワット)級の洋上専用機が開発され、コスト的にも競争力が出てきているという。「産業的にも成熟し、最近では(プロジェクト)入札が行われ、大型化に伴い発電コストも大幅に低減している。現在では電力単価が石炭火力より安い発電所も登場するなど、価格も一般電力並みになってきた。設備の大型化が進み、スケールメリットが出てきたことで、補助金ゼロの入札事例も登場している」と欧州の現状を加藤氏は紹介した。

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