地中熱システムの導入コストを削減、新型掘削機を開発省エネ機器

鉱研工業と日伸テクノは地中熱利用システム専用の新型掘削機を開発。掘削時間を30%以上、作業人員を3分の1まで削減でき、地中熱利用システムの導入コスト削減に貢献するという。

» 2018年07月19日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 鉱研工業と日伸テクノは2018年6月、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で、地中熱利用システム専用の新型掘削機「FSGT-150C」を開発したと発表した。地中を掘削するロッドの最適な振動制御により掘削時間を短縮するとともに、自動のロッド交換システムの採用により作業人員を削減できる。今後、鉱研工業は、同掘削機の改良を進め、2019年度より販売を開始する予定だ。

開発した掘削機 出典:NEDO

 地中熱利用システムは、地中に埋設した熱交換器を通じて地中の熱を取り出し、ヒートポンプで効率よく熱を輸送して、室内機で冷房・暖房として利用する。地中熱は、他の再生可能エネルギーと比較して設置場所の制約が少なく、安定供給が見込めるなどのメリットがあることが知られている。しかし、地中熱交換器(地中で熱交換するために必要な採放熱パイプ)の設置コストが高いことやシステム全体の高効率化が必要であることなど、課題があり、これらを解決することが地中熱利用を拡大するために必要不可欠となっている。

 こうした中、両社はNEDO事業で新型掘削機を開発した。経済的で効率的が特徴で、これらは高効率バイブロヘッド、二重管ロッド脱着システム、自動洗浄プログラムの開発の成果により実現した。

 従来機より低い振動数で経済的かつ効率的に掘り進めることができるバイブロヘッドは、井戸の掘削地盤として想定している地層で、最大50%以上、平均でも30%以上の掘削時間が削減可能だ。また、無駄なエネルギーを減らすことができるため、機器の損耗が少なく長寿命化も期待できる。

 従来、掘削作業で、重量があり脱着に大きな労力が必要となる二重管ロッドの交換作業は手動で行っており、危険を伴う上に多くの作業工数を要するという課題があった。今回開発した二重管ロッド脱着システムは、二重管ロッドの補給、二重管のうち内管ロッド回収の全工程、外管ロッド回収の大部分の工程を自動化した。この結果、作業員の安全性向上に加え、従来3人で行っていた作業を1人で行うことができる上、作業工数も20%以上削減できるようになった。また、ロッドを収納する部分であるロッドマガジンを掘削機に装備したことにより、ロッドを装填(てん)したままで現場内の移動が可能になり、掘削位置の変更に伴う段取り作業の高効率化が図れる。

 掘削中の孔内洗浄作業は、安定した掘削を進める上で重要となる。しかし、この作業は作業者の熟練度に依存しており、多くの時間を費やしていた。自動洗浄プログラムは、この課題を解決するために掘削試験を繰り返し行い、洗浄水の流速データや各地の地盤のフィールドデータを解析し開発した。これにより2017年度の掘削試験では20%以上の工数削減効果を実証することができた。

 NEDO事業では、地中熱交換器設置工事における掘削、孔洗浄、ロッド脱着工程に関する技術改良を施し、開発した新型掘削機を用いた掘削実証試験(100m掘削を4回実施)を行った結果、作業員の安全性向上と、掘削時間の30%以上の削減に加え、作業人員を3分の1まで削減できたことにより作業工数を20%以上削減できることを確認した。なお、施工孔本数の多い大規模工事では、さらに大きな削減効果が期待できるとしている。

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