災害対応やインフラ維持管理などドローンの可能性、先進的な自治体の施策事例から読み解く第2回ドローン×インフラメンテナンス連続セミナー(2)(3/4 ページ)

» 2018年09月20日 14時30分 公開
[石原忍BUILT]

複数のドローン・ロボットを橋の部位によって使い分け

 岐阜県各務原市は、「各務原大橋」の点検をドローンによって行った。登壇者は、市都市建設部 道路課長・中村俊夫氏で、ドローン点検の手法とメリットを説明した。

 各務原市内には、市が管理する2m以上の橋梁(きょうりょう)は530橋あり、全ての橋の定期点検が2015〜2018年度の4年間で行われた。

各務原大橋の橋梁諸元
各務原市・中村道路課長

 ドローンを含めたロボットによる点検を実施した「各務原大橋」は、2013年3月の架設。橋梁形式はPC10径間連続フィンバック橋で、長さ594m、全幅員17.1m。歩道の幅員は3mと広く、歩車道の境界にフィンバック部材があるため、一般的な橋梁点検車「BT400」を利用しても点検が困難とされている。そのため、現状での点検方法は、国内に数台しかないといわれる「超大型橋梁点検車」「高所でのロープ作業」「特殊な足場組み立てによる点検」と、いずれもコスト面での負担が大きい方法をとらざるを得ない。

 問題解決に向け、各務原市では、2017年7月6日に岐阜大学(SIP)と「インフラ維持管理マネジメント技術に関する協定」を締結。同年4月・11月にロボット技術の損傷検出性能を評価するため、各務原大橋でフィールド試験を実施した。試験では、近接目視点検によって作成した損傷図と、ロボット(ドローン系・ロボット系)が取得した情報を基に作った損傷図を比較し、0.1mm以上のスクラッチを抽出できることが確認され、ロボット技術は橋梁点検に活用できると判断した。

2017年4月・11月に行ったロボット技術の評価

 しかし、河川内径間、床版、主桁、ブラケット、支承、下部工などの点検対象部位によって、ドローン系(二輪型マルチコプター、可変ピッチ機構付きドローン)、ロボットカメラ系(ロボットカメラ、カメラシステム)、打音点検ロボットのそれぞれで向き不向きがあるとされたため、組み合わせた運用が必要となった。

 こうした成果を踏まえ、市では、岐阜大学、内閣府、国土交通省、岐阜県らと、他の地方自治体でもロボットによる橋梁点検が行えるように指針(案)を策定。案では、“事前調査”部分にロボットによる変状情報の取得を位置付け、その後の法定点検では、点検員による近接目視、損傷程度の評価を行い、検査員が対策区分を判定して健全性を診断。最後に点検結果をまとめるというフローを示した。

 定期点検として行った各務原大橋の点検業務では、富士通・名古屋工業大学およびデンソーの2機種のドローンを使用。ロボットも、三井住友建設と、シビル調査設計の2機種を導入し、上部工・支承周り・下部工でそれぞれ使い分けた。ロボット点検はあくまで事前調査で、実際の点検は、ロボット点検の結果を踏まえ、超大型点検車とロープアクセスを用いた近接目視で実施した。

各務原大橋の橋梁定期点検業務

 ロボット技術のメリットについては、点検日数が減ったことで、約600万円/日がかかっていた超大型点検車のレンタルコストが削減された他、交通規制の短縮、大断面を有する大型橋梁の点検が容易、経年劣化を把握するための3Dモデルと組み合わせた高度情報管理(データベース化)の構築、将来的な技術者不足を補う期待などを挙げる。

 これからの課題点としては、1つの機種では橋梁全ての部材を点検できないため、複数機種の組み合わせが不可欠。そのため、1社のみではなく複数社への発注となるため、発注そのものの考え方を変えなければならないとした。

 また、道路橋定期点検要領など、現行の法令・基準がロボット点検を前提としていないので、点検手法の確立や道路管理者の裁量緩和も早急に必要。さらに、自動でひび割れ検出できるAI開発など、国の補助対象を拡大することも、今後は重視されるとした。

 最後に、県独自のドローン運用マニュアルをまとめ、“日本一の安全基準”を掲げる福島県の施策を紹介する。

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