有機薄膜太陽電池を高性能化、フッ素原子を使う新型アクセプターユニット太陽光

大阪大学らの研究グループがフッ素原子を導入した新しいアクセプターユニットの開発の開発に成功。有機薄膜太陽電池の高性能化などにつながる成果だという。

» 2018年10月31日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 大阪大学の研究グループ2018年10月、化学メーカーの石原産業(大阪市)、ドイツマックスプランク高分子研究所などと共同で、フッ素原子を導入した新しいアクセプターユニットの開発に成功したと発表した。加えて、これが有機薄膜太陽電池のn型半導体の構成ユニットとして有望であることを世界で初めて明らかにしたという。

 アクセプターユニットは、電子密度の低い電子を受け取りやすいユニットで、分子内に電子密度の高いドナーユニットと電子密度の低いアクセプターユニットを組み合わせると、分子内電荷移動型のドナーアクセプター型構造を作ることができる。

 高性能の有機半導体材料を開発するためには、アクセプターユニットを分子構造の中に組み込むことが不可欠となっている。ナフトビスチアジアゾール(NTz)は、強力なアクセプターユニットとして世界的に用いられている分子で、これのアクセプター性をさらに高めるためには、電気陰性(電子を引き寄せる強さの相対的な尺度)のフッ素原子の導入が効果的だ。しかし、有機合成の困難さからフッ素原子の導入がこれまで達成できていなかった。

 これに対して、同研究グループでは新規な有機合成ルートを確立し、フッ素原子を含むナフトビスチアジアゾール(FNTz)の合成に初めて成功した。さらに、FNTzを組み込んだ有機分子を有機薄膜型太陽電池のn型半導体材料として用いたところ、フッ素を含まない材料より性能が大きく向上することが明らかとなった。

開発したフッ素を含むアクセプターユニット(左)と、これを含むn型半導体材料の構造および太陽電池特性 出典:大阪大学

 各種用途の有機半導体材料に対して、このFNTzユニットを導入することで性能が向上することが見込まれる。とりわけ、NTzが有効に機能する実績がある点で、有機薄膜太陽電池のp型半導体ポリマーに向けた応用が期待されるとしている。

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