スマートエネルギーWeek 2019 特集

蓄電池に直流給電できる新型「エネファーム」、最大8日間の給電が可能蓄電・発電機器

パナソニックが家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品を発表。停電時に蓄電池に対して直流給電できる機能などレジリエンス機能を強化した他、小型・軽量化も図ったのが特徴だ。

» 2019年02月25日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 パナソニックは2019年2月22日、家庭用燃料電池「エネファーム」の新製品を発表した。戸建住宅向けのモデルで、床暖房システムへの熱利用や蓄電池との連携など、省エネやレジリエンス(防災性能)に役立つ機能を強化した他、小型・軽量化も図った。価格はオープンで、同年4月1日から販売する。

発表した新型エネファーム

 新モデルは発電効率40%、熱回収効率57%とそれぞれ1ポイントずつ向上させ、総合効率を97%に高めた。都市ガス/LPガス向けの2モデルを展開する。

 機能面での特徴は大きく3つ。1つ目は、排熱を床暖房に利用できる機能を追加した。従来モデルはエネファームのバックアップ給湯器の熱を床暖房に供給する仕組みで、この熱はガス燃焼によるもの。新モデルは起動時にガス燃焼を利用するものの、温度が安定すると、床暖房の保温に貯湯タンクのお湯の熱を利用できる。これにより全体の投入ガス量が減るため、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現や光熱費の削減に有効という。

床暖房への熱利用システムを強化

 2つ目はレジリエンス機能の強化だ。従来モデルではオプション機能として提供していた、「停電時発電継続機能」を標準搭載する。全てのモデルで、稼働中に停電が発生したでも場合最大500W(ワット)、最長192時間連続の電力供給が行えるようになる。

 さらにレジリエンス向けのもう1つの新機能として、同社のハイブリッド蓄電池との連携機能をオプションとして追加した。停電時を想定した場合、容量5〜7kWh(キロワット時)蓄電で家庭の電力を賄えるのは1日程度。太陽光発電と連携していた場合でも、天候が悪ければ電力を確保できない可能性がある。

 そこで新モデルでは、停電時にエネファームから蓄電池に最大650Wで直流給電できるオプションを追加。最長で連続192時間にわたって蓄電池に給電を行いつつ、熱も活用できることから、より住宅のレジリエンス機能の向上に貢献できるとしている。

停電時に蓄電池に直流給電を行える機能を追加

 3つ目は設置しやすさの向上を目指した小型・軽量化だ。従来モデルと比較して高さを100mm(ミリ)低い1650mmに、奥行きを50mm小さい500mmに、燃料電池ユニットの重量を9%減となる59kgとした。高さを100mm低くしたのは、水回り設備が近い住宅北側の窓付近に設置した場合でも、窓の一部をふさがないようにする配慮だという。さらに奥行き500mmを達成したことによって、民法上の隣地境界線の問題もクリアしやすくなるとしている。

新型エネファームの従来モデルとのサイズ・重量比較

 エネファームなどの家庭用燃料電池について、政府は2030年530万台の普及目標を掲げているが、現状国内市場全体での累計数は28万台(2018年12月時点)にとどまっている。パナソニックは累計生産15万台(同)を達成しているが、2017年に発表した「2019年度に累計生産20万台」という目標に対してはギャップがあり、国内市場については「踊り場にきている」(同社)という。

 こうした状況の打開策として、パナソニックはアプライアンス社だけでなく、エコソリューションズ社の販路も活用して拡販を図る。特に販路として開拓の余地があるLPガス事業者向けのルート開拓、さらにハウスメーカーなどへの提案を強化していく方針だ。

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