太陽光の電力を住宅・商業施設で融通、さいたま市で先進実証がスタートエネルギー管理

さいたま市で住宅や商業施設に導入した太陽光発電の電力を融通する、新しい電力取引の仕組みの構築を目指す実証実験がスタート。専用機器を設置して、太陽光発電の電力を住宅や周辺施設の間で仮想的に取り引きできる市場を構築する。

» 2019年02月27日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 太陽光発電で発電した電力を住宅間で融通ーー。さいたま市でこうした新しい電力取引の実現に向けた先進的な実証実験がスタートする。舞台となるのはポラスグループの中央住宅(埼玉県越谷市)が開発した戸建分譲プロジェクト「浦和美園E-フォレストコネクテッドサイト」。専用機器を設置して、太陽光発電の電力を住宅や周辺施設の間で仮想的に取引できる市場を構築する。

 実証事業は環境省の「2017〜19年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」で採択されたもの。エネルギー関連ベンチャーのデジタルグリッド(東京都千代田区)が代表事業者で、東京大学が共同事業者として参画している。

 実証では、分譲地内の住宅5棟に設置する太陽光発電と蓄電池、さらに近隣の商業施設「イオンモール浦和美園」に設置する太陽光発電と、イオングループのコンビニ5店舗の間で電力を融通する。各住宅設置する太陽光発電の出力は5.3kW(キロワット)で、蓄電池の容量は12kWh(キロワット時)。イオンモール浦和美園には60kWの太陽光発電を導入した。

実証事業のイメージ 出典:中央住宅

 電力融通を実現する上で重要な役割を担うのが、デジタルグリッドが開発した「デジタルグリッドルーター(DGR)」と呼ぶ電力制御装置だ。外部のコントローラーからの指令を受けて、電力の送受電を行ったり、電力系統と非同期接続したりすることで、系統側に影響を与えずに再生可能エネルギー電源を活用できるという。このDGRが太陽光発電を導入する住宅5棟と、イオンモール浦和美園に設置する。

 なお、太陽光発電を設置しないイオングループのコンビニ店舗には、こちらもデジタルグリッドが開発した「デジタルグリッドコントローラー」をもので、DGRのように発電システムに対する直接的な電力制御機能は保有しないが、同社のブロックチェーン技術を活用した電力取引基盤「デジタルグリッドプラットフォーム」と通信を行いつつ、需要拠点に設置されたスマートメーターのデータを取得して電力の識別と融通決済をサポートする機能を持つ。

 実証実験の期間は1年間を予定。なお、住宅に設置した太陽光発電などの設備は、実証終了後から10年目に住宅購入者に無償譲渡する計画だ。

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