太陽光発電所で“ヤギ”を飼うのは効果的? 農薬選びのポイントは――雑草対策Q&A基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(10)(2/3 ページ)

» 2019年04月24日 07時00分 公開

Q4.事業用地の契約形態によって、除草剤の使用に注意が必要か?

A:除草剤を使用できるケースについては、いくつかのパターンが想定されますので、以下で代表的な例を紹介します。

1.私有地の場合

 駐車場や建物の敷地管理と同様の扱いとなり、除草剤の使用に差し支えないと考えます。ただし、敷地外に除草剤がドリフト(飛散)しないようにする対策と、近隣に化学物質過敏症の方がお住まいになっている可能性もあるため、近隣の方へ立て看板などで事前に告知する必要がある場合があります。

2.賃借地の場合

 最初に賃貸借契約書の内容を確認する必要があります。契約書に除草剤の使用禁止が記載されている場合がありますのでご注意ください。賃貸借契約書に何も記載されていない場合、地権者に使用する農薬の除草剤(登録された農薬)を開示し、承諾をもらってから使用するようにしてください。

 弊社の場合、農薬の除草剤のみを使用しています。また、必要に応じて除草計画書を発電事業者用と地権者用の2部を作成する場合があります。いつの日か発電所の賃借地を更地(さらち)にして返却する日が訪れます。そのため、使用予定の農薬の除草剤を開示することと、除草計画書を地権者に提出することは、事業を円滑かつ問題なく完了するために有効な方法だと考えています。

Q5.おすすめの除草剤は?

A:この場で特定のメーカー、商品名をお答えすることは不適切だと考えるため差し控えますが、必ず登録農薬の除草剤を必ず使用してください(登録農薬についての解説は本連載の第6回の記事へ)。また、同じ除草剤を長年使用し続けると耐薬剤がある植生(除草剤が効かない)が残る場合がありますので、留意しておきましょう。

 除草剤は大きく分類すると、2つの処理方法(枯らす方法)に分かれます。

1.茎葉処理型

 活性状態の植生の葉や茎に付着し、雑草の内部組織に吸収・移行されることで効能が発揮する薬剤です。液剤が多く、水で50〜100倍などに希釈・撹拌(かくはん)して散布する方法で使用されています。この処理方法は最も費用が安い方法で、一番よく使われている工法ですが、草刈後(葉や茎が無い状態)に散布しても効果はありませんし、発芽前の植生にも効果はありません。

 メーカーによりバラツキがありますが、散布後に雨が降った場合、葉や茎に付着した薬剤が雑草の内部組織に吸収される前に流れ落ち、効果が無くなることがよくありますので要注意です。

 私が選ぶ際には、効能と薬剤費だけでなく、作業性、散布条件、効果発揮のスピード、メーカーの信頼性・情報開示などを総合的に判断して使用しています。さらに、より安全・安心を求めて、数年毎に、耐薬剤植生の対策と薬剤の見直しを必ず行っています。

2.土壌処理型:

 土壌に散布し、土壌内に含まれた薬剤に根や発芽した芽が触れ、雑草の内部組織に吸収・移行することで効能が発揮する薬剤です。粒剤や液剤などがありますが、まくタイプの粒剤を使用されている方が多いです。

 粒剤の場合、散布方法が最も簡単で効果が3〜6カ月続くため、裸地の管理や頻繁に作業を実施できない発電所には適しています。しかし、排水性のある土壌には適しておらず、ある一定程度の降雨がないと効果が期待できない場合があるため、散布予定土壌の事前調査が必要になります。また、裸地の状態が3カ月以上続いている場合は、雨などで土砂流出する可能が高くなるため、法面、傾斜地、敷地境界などの場所には不向きです。

 私が選ぶ土壌処理型粒剤のポイントは、雑草には効果があるが、サツキやツツジなど根が浅い樹木を枯らさないものを選んでいます。また、茎葉処理剤と同じで、必ず薬剤の見直しも定期的におこなっています。

Q6.「ランドアップ(グリホサート)」が問題(発がん性)との記事がネットに出ていますが本当でしょうか?

A:製造・販売元でない弊社の立場ではお答えできない質問ですが、メーカーの専用Webサイトにお知らせがございますので、こちらをご参照願います。

Webサイトのリンク:https://www.roundupjp.com/information/

Q7.効果的な除草剤の散布時期はいつごろでしょうか(場所:徳島)

A:除草剤の容器に記載されている使用上の注意書きや除草剤メーカーのWebサイトなどには、土壌および茎葉処理型を問わず、次のように記載されていることがあります。

  • (植生の高さについて)◯◯cmまでの高さで使用してください
  • 植生の背丈が高い場合、◯◯cmまで草刈りをしてから散布してください

 雑草は、気温、降雨量と晴天率で発芽、成長のスピードが大きく変わりますので、時期よりも植生の背丈の高さなど生育状況を確認しながら散布時期を判断するのが良いと考えています。

 よって、夏などの成長がピークに達した場合でなく、早めに散布する方が薬剤の効果が期待できます。しかし、冬から春、春から夏など季節の変わり目は必ず降雨があり、梅雨のシーズンもあります。茎葉処理型除草剤の場合、雨天の場合は散布できないので、要注意です。

 永遠の課題かも知れませんが、天気を予想することは難しく、悩ましい問題です。

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